これまでの記事では倉庫現場で起こるミス・間違いについて言い訳してきました。
では出荷ミスや間違いをなくす・減らすために、私はどういう事をしてきたのか?
基本の考え方は「オペレーションは性悪説で組み立てろ」です。
何のこっちゃ?でしょうか。
「性善説」とは孟子の唱えた「人間の本性は基本的に善である」という概念です。
それに対して「性悪説」はその後荀子が唱えたもので「人間の本性は悪であり、たゆみない努力と修行のよって善の状態に達することが出来る」というものです。
ここでの「悪」は「悪事や非道な行為」を言うのではなく、「人間は身も心も非常に弱い存在であり、欲望や快楽などの煩悩に流されやすい欠点がある」という意味だそうです。
日本人は概ね「性善説」で物事を考えているのではないでしょうか?
「嘘をつくわけがない」、「悪いことをするはずがない」、「間違いを起こすはずがない」など。
物流の現場でもその考え方が前提になっているように思います。
「人は指示されたとおりに作業するものだ」→「指示された通りにきちんと作業すれば間違えるはずがない」
でも間違いやミスは多々発生するものです。
「きちんと」とはどう言う状態なんでしょうか?
日本人は勤勉で賢いです。
それが物流の現場でマイナス要素になる事が時々あります。
例えば、作業工程が決まっているのに、「こうした方が効率的だから」とか「こうした方が楽だから」と考え、作業者が勝手にやり方・工程を変える事があります。
当事者本人は悪気はなく、より良くしようとしているのですが、それが後工程で面倒なことになったり、ミスを引き起こしたりします。
外資系企業の物流をやっていて学んだ事があります。
欧米では「性悪説」でもの事を考え、決めていく事です。アメリカで中国の思想が浸透しておることではないですが、欧米では「人間とは間違いを起こす動物である」を大前提に物事を組み立てると知りました。
多種多様な人種、言語の人が一緒に働く職場においては、作業員に考えさせないようにします。
作業中に考えさせない、判断させない、ことが均一で一定の品質を保った作業結果をもたらします。
考えなく作業をさせるために「マニュアル」を作成します。それは「どんな人でもマニュアル通りに行えば間違える事なく作業完遂できる」。そんなマニュアルを作ります。
倉庫作業だけでなく、いろいろなところでマニュアルは存在しますね。
日本の倉庫現場にもマニュアルがあります。
しかしマニュアル自体が具体的な所作を記載していなかったり、作業者がマニュアルを見なかったり、マニュアルから外れた事をしても咎めない風習があったりします。
それは性善説が基礎になっているからではないか、と考えています。
日本人は「勝手な事をしても悪いようにはしない」と考えてしまうからではないでしょうか?
でもそれがミスや非効率を生み出しているのでは?
私はアメリカの性悪説、「人間は間違える動物だ」の概念にハタと膝を打ちました。
「そうか、間違えることを大前提として、間違いにくいオペレーションはどうやれば出来るのかを考えればいいんだ。」
それから作業工程において間違えるパターンを洗い出し、各々の間違い原因を考え、間違いにくいオペレーションを考えるというやり方をしました。
・商品の置き場所、置き方
・作業台や棚の配置
・作業台や棚のサイズ、特に高さ
・右から左に流すのか、左から右に流すのか
・一人でやるのか二人ペアでやるのか
・ピッキングリストにはどういう項目がどういう順番で印刷されれば良いのか
などなど考えなければならない事は山ほどあります。
普通にやれば出来るだろ、きちんとやれば出来るだろ、と思ってはいけません。人間は間違えるのです。
頭がよかろうが悪かろうが、勤勉だろうが怠惰であろうが、若かろうが年寄りだろうが。
誰がやっても間違えにくいオペレーション構築が究極の理想です。
間違いにくくする=効率が悪くなる、場合も出て来ます。(前回の記事、トレードオフは必ずある参照)
また結果的に、普通に作成したオペレーションと、性悪説に基づいたオペレーションが同じになってしまうこともあります。
考えて作ったと言っても、100%完璧なものなど出来ません。ミスは発生します。
そのミスの原因を抑えて、また間違えにくいやり方を考えます。
オペレーション中に作業者は考えなくて良いのです。判断しなくて良いのです。頭は使わなくて良いのです。
オペレーションを組み立てる時に時間をかけて、必死に頭を使い、知恵を絞ることが重要なのです。
今回「オペレーション」と言う単語を使いました。
オペレーションとは機械を操作することや、病院の手術のことを差しますが、倉庫の作業・工程のこともいいます。
今後オペレーションと言う言葉を使っていきます。
だって、カッコイイでしょ?