アトピー性皮膚炎 | 大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

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30代 男性

 

仕事のストレスか、暴飲暴食の影響か、季節的なものなのか、落ち着いていたアトピー性皮膚炎が一気に爆発し、上半身を中心に赤み、浮腫み、熱感、強度の痒み、多量の滲出液が出現。

 

夜間に痒みが気になって気になって全く眠ることができないとのこと。

 

患部所見は、顔面全体、デコルテ、前腕部は真っ赤か、浮腫んでシワが消失し、触れると熱感あり。圧迫にて赤みは消失するため、毛細血管の拡張が強度にあり、血球成分の漏出はなし。毛細血管の拡張および肌肉の保水力は限界を超えてしまっているため、多量の滲出液となって現れているもの(および掻破によるもの)と考える。

 

指は皴の部分で切れが頻発。

 

手の甲から手首部分は強度の皮膚甲錯。

 

こんな状況になる前に、外用のステロイドで炎症が悪化しないようにコントロールすればいいのにと思うが、アトピー性皮膚炎で漢方相談に来られる方は、ステロイドに対する抵抗感が非常に強く、一切使用しないという方が多い。

 

ステロイドは正しく使ったら、対症療法としては本当にいい薬やと思うのですがね・・・。

 

ということで、この状況に対し漢方オンリーで対処することに。

 

 

 

 

 

考え方としては、皮膚表面にこのような症状が出ている場合、皮膚に「毒」が蓄積し、そのために炎症・アレルギーが勃発している。

 

問題は、その「毒」がどこから来て、どのように暴れているのか?そしてそれをどのように処置するのかということ。

 

アトピー性皮膚炎では一貫堂医学の考え方を応用することが最近は多く、通常なら荊芥連翹湯を中心に皮膚表面に蓄積した毒を取り除き、炎症・アレルギー状態からの離脱を図る。

 

またその毒が気分で留まるのか、血分にまで及ぶのか等を鑑みて、毒を発散させる(汗から出す)、吸収して尿・便から抜くなどを併せて考え、漢方は薬効成分が患部まで届いてようやく効能を発揮するという西洋医学的発想から、患部に瘀血が存在する(皮膚甲錯があるなど)場合には、適宜、活血化瘀剤を併用していく。

 

このような考えに基づく処方の組み立てだと、1方剤で治まるようなことは稀で、複数方剤の組み合わせ+中草薬の加味が必要となるのが自分の考え方の1つの特徴となる。

 

 

 

 

今回の症例では、患部は真っ赤か、熱感も強く、多量の滲出液が出ていること、夜間の痒みが酷く眠れないことから、その影響は血分まで及び、荊芥連翹湯という表層の毒を取り除く方剤では全くもって役不足と判断。

 

毒の量が多量であることも想像し、その解毒は発散させて取り除くのではなく、肝腎の解毒機能強化により取り除く必要があると考え、竜胆瀉肝湯(一貫堂)を選択。

 

毛細血管が強度に拡張しているということは、それだけ血分に熱がこもっているということを意味し、それが血熱となって炎症を悪化させているので、同時にこの血熱を清熱涼血する。

 

熱の捨て所は、肝腎の解毒機能強化を使う関係上、発散、つまり発汗ではなく、便通を通じて行った方がより効率的になると考え、大黄牡丹皮湯を加味。

 

さらに瘀血の処置に平性・涼性の中草薬が配合された雲南片玉金、笹の解毒作用と生津作用を期待してササヘルスでサポート。

 

毒を含め、すべての動きを活発化し、早く現状から離脱することを目的に理気薬の排膿散を1/2量で使用。

 

 

この方剤構成にて、皮膚表面に多量にたまった毒を血液・リンパを介して循環器系に還流させ、肝臓と腎臓に運んで解毒させ、熱とともに便を通じて排泄させることから、皮膚表面のみならず、身体全体を浄化して急性症状からの離脱を図った。

 

これにより症状は急激に落ち着いていく。

 

同処方を数か月使用することで赤みも減少し、滲出液も止まり、熱感も治まって夜の痒みはなくなり、眠れるようになった。

 

本来ならこのような処方は長期にわたって使用することはなく、落ち着きを取り戻した時点で毒が溜まらないような処方に切り替えるのだが、ちょっとでも変方しようものなら、再燃してくるような状態だったので、しばらく続け、その後、落ち着きを取り戻すことが可能になり、減薬もできた。

 

 

 

 

仮に滲出液が多量に出てしまい、体力を失って細菌感染などを併発してしまうと、実にややこしい状態となってしまうので、そうなる前に漢方にて対処できたのは不幸中の幸いだ。

 

アトピー性皮膚炎の治療は実に多様な方法があり、漢方と一言で言っても、それぞれの専門家が自身の考えに基づいて対処しており、理論は統一されているとは言い難い。

 

とはいえ、それぞれが独自の方法で治しているのであれば、それはそれでよいのかもしれない。(自分に合った方法が選べるという点でも)