
7、人類の未来を示している第五福竜丸
第五福竜丸は、放射能に汚染されて焼津の港へ帰ったあと、東京に移され、文部省が買い上げ、東京水産大学の練習船に改造されました。そして長い間、遠洋漁業に従事(じゅうじ)しようという学生さんの訓練に使われることになりました。
10年ほど使ったあと、この船はもう練習船としても使えなくなってしまった。そういうことで江東区の夢の島、今みなさんが腰をおろしている所に、この船はつながれることになりました。ゴミの中に、この大きな船を捨ててしまうことになりました。
しかし、この近くで働いているいろいろな人たち。木場のいかだを運んでいる人たち。職人さん。また石川島播磨という工場の人たち。みなさんの辰巳小学校や扇橋小学校、南砂西小学校の人たち、学校の先生たち。区役所で働いている人たち。江東区の多くの人たちが、なんとかこの船を保存したいということで、富岡八幡宮に行って募金をしたり、そんな活動を毎日毎日やりました。
江東区の深川に住んでいた島田轍之助さんというおじいさんが、この船が水に沈みそうになっていると聞き、毎日毎日通って、水をかい出して、この船を守ってくれました。私もその活動に参加しました。何回も船に通って水をかい出しました。
どうしてそんなことをしたのでしょう。
この船は、名前も「はやぶさ丸」という名前に変えられていましたけれども、「第五福竜丸」であるということが、みんなの調べによって分かりました。この船は沈みそうになっていましたけれども、私たちに「何とかしてほしい、ぼくの声を聞いてもらいたい。」そういうふうに言っているように聞こえたからであります。
たくさんの人々の努力によって、今から25年前(1975年)、この船は展示館におかれることになりました。この船の母港は、いわば東京都夢の島にあるわけです。そしてこの船は、原爆や水爆のない未来をかけて、世界の人々に「核兵器をなくそう」「核兵器を廃絶しよう 」「使わせてはいけない」と呼びかけています。
この第五福竜丸のできごとがあったとき、有名な宣言がひとつあったんです。それは「ラッセル=アインシュタイン宣言」というものです。哲学者・ラッセル、原子物理学者・アインシュタイン、日本の物理学者・湯川秀樹といった、ノーベル賞を受賞した科学者たちが署名しました。
『今、人類は、「ヒト」という自らの種族(しゅぞく)に終止符(しゅうしふ)を打たなければならないのか?
それとも、原爆や水爆をなくし、戦争のない平和な未来を切り開いていくことができるのか?
ふたつにひとつの時代に入ったのではないか。』
そういうことを呼びかけた宣言だったのです。
この船は、そういう意味で、人類の未来を示している。そのことをみなさん、ぜひ考えていただきたい。そして、みなさんの「郷里の船」が世界に向かって、そのことを呼びかけている 。これをぜひ誇りに思っていただきたい。ぼくはそれだけをお願いしたい。 今日は、みなさんが来てくれてお話を聞いてくれたことを大変喜んでいます。
どうもありがとうございました。
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