今日は6月27日。30年前のこの日、「松本サリン事件」が起こりました。テレビで報じられたのは、ちょうど今ぐらいの時間、夜のニュース番組だったと思います。
この「松本サリン事件」の際に、犯人であるかされてのような報道をされてしまったのが河野義行さんです。しかし、真相は「オウム真理教」が起したと分かりました。とんでもない「誤報」で河野さんは大変な目にあったわけです。
この「松本サリン事件」の冤罪を描いた映画がありました。『日本の黒い夏 冤罪』(2001 熊井啓監督)です。デビュー作から『帝銀事件 死刑囚』(1964 熊井啓監督)という実際に起こった事件をモチーフにした社会派の熊井啓監督らしい力作でした。『帝銀事件 死刑囚』では、何と事件があった銀行を建築した大工さんを探し出し、原寸通りのセットを組むほどの実証主義の方なので、この『日本の黒い夏 冤罪』についても綿密な調査をして臨んでいました。
この映画はキャストが良くて、河野さんの役を寺尾聰さん、松本のテレビ局のデスク役に中井喜一さん、捜査する警部には石橋蓮司さんで、どの人も好演でした。あと、北村有起哉さんが視聴率のことしか頭にない局員役で「また他社に抜かれちゃいますよ!」とスクープ至上主義のいかにもいそうなイヤな奴を演じていて印象に残っています。(たしかお父さんの北村和夫さんも出ていて親子共演だったと思います)
裏をとらないで報道してしまい、それを観た住民たちが河野さんの家族を迫害するという展開は、こうしてフェイクニュースが作られ、メディアリンチになっていく怖ろしさがよく伝わってきます。衝撃的だったのは、すでに「オウム真理教」の犯行ではないかと掴んでいてもまだ河野さんへの捜査が続いていたことです。しかも、「いざとなればオウムと関係あるとすればいいんだ……」というのが本当に怖かったです。
映画は、遠野凪子さん演じる放送部の女子高生が、この事件について話をきくという設定で進みます。この遠野さんが真っ直ぐに「人権とは言葉だけなんですか⁉」と問い詰めるシーンがあり感動的でした(今、遠野さんは全く違うキャラになってしまいましたね……)が、当時、映画好きの友人が「今どき、あんな女子高生いないよ」みたいな批判をしたのを覚えています。
高校教師だった僕から言わせてもらうと、そういう生徒だっているし、ちゃんと社会のことを考えている生徒だって多いので、ちょっと嫌な気持ちがしました。どうも、映画好きの中には、真面目な映画というだけでバカにするような傾向があるなあと思ったのです。いわゆるエッジのきいた映像やキャラクターの出てくる映画とか、作家性の強い作品は手放しで褒めるような輩が確かにいるのです。(ジャッピー!編集長)