衛星劇場のディレクターさんに奥さんが連れて行ってもらったお店のMayol
彼女と付き合いはじめのころにいっしょに行こうと約束していたお店です。
メニューはスパゲッティ100種!マイヨール。昼時店頭にずらりと行列ができている人気店でした。
あなたはジャック・マイヨール氏(Jacques Mayol)をご存じですか?
リュック・ベッソンの映画「グラン・ブルー」のモデルとなった人として世界的にも認知されている人物です。
彼は首を吊って2001年12月に亡くなりました。
ジャックマイヨール氏は人類として素潜りで初めて100メートルを超えた人物でイルカや鯨に見られるような深い場所で、血液が脳や心臓や肺に集中して、生体を維持する現象が人間にも見られることを証明したことでも知られています。
僕が生前の彼と初めて出会ったのは東京の国際フォーラムでの環境国際シンポジウムでした。
当時、まだ素潜りの「素」さえも未知で無知だった僕は、海の師匠の紹介で彼と話せる機会を頂きました。
それがジャックと「初めて」でした。彼は白髪に上下に真っ白のスーツを着用してダンディーな男でした。日焼けした小麦肌から歳を重ねた数の皺が体格の細い分だけ浮き出っていました。
海の男として生きた勲章と言えんばかりと誇らしげに
「ナイスだろ!」と。
初対面の僕へフランス人らしいジョークを飛ばしては、溢れんばかりの笑みが皺の隙間から滲み出ていました。
そこから幾つかの彼との再会を果たして、彼が海へ素潜りをする姿を見届ける度に強烈な個性と圧倒される彼自身の生き様。
「魚」
「イルカ」
人間じゃない?彼は人間でしょう。
幻覚のような夢を見ているような魚になった人間を映画でみているような不思議でした。僕は彼を目指すように素潜りを練習しました。
イルカの時速は最高で約50キロ近い。
彼らと泳ぐには余計な水中での人間の動きは無駄です。陸で生きている呼吸では素潜りは通用しませんでした。
更にイルカを素潜りで撮影するには潜る技術と撮影技術とすべてにおいてのレベルアップが要求されました。海の中の生物に人間の動きは通用しませんでした。
海は大自然の神の頂の景色を厳しい世界で撮る限界を魅せつけて、時には牙を剥きます。甘さを抱えて生半可な感情を持って潜るとき命もろとも失ってしまいます。
素潜りをしたい!
撮影したい!
タバコを断ち酒を断ちすべてを素潜りに捧げた季節がありました。
ジャックの素潜りに恋した季節でした。
恋して憧れて海へ情熱を燃やして生きた。
そんなジャクマイヨールが…でした。
晩年のジャックが
「歳を取るといつものようにはいかない」
「海へ行けないと、息苦しいんだ」
「息ができない」
そんなことを人伝てに聞いて間もなくして海外滞在中に「自殺」を耳にしました。彼の遺体発見は死後数日が経っていました。
人は個々で居場所も心地よい場所も違います。それでもやっぱり「死」を選ぶ選択肢だけはしちゃいけない!命日が近くなるといつも思い出すのは彼との思い出と死と生についてです。
命は生きているのだから天命を全うするまで生きなければなりません。それが命のある者への役割りですね。
それでも、東京八丁堀にあるお店のMayolは映画「グランブルー」を知る者にとって、心振う瞬間を束の間で堪能できます。
パスタは1人前がめちゃ量が多いです。
すごく美味しかった!
また来ようねと言って店を後にしました。
今日から映画マーベルズ日米同時公開。2019年の映画キャプテンマーベルの続編です。