琉夏の愛用していた、小さなふきん掛けがあります。琉夏がうちにきたときから愛用していた物です。
8年くらい愛用していたので真新しい物に買いかえてあげたくて説得したことがありました。
琉夏の視力の抜群の良さは彼のテリトリーに置かれている自分の物を見ているので竿を取り外すこともごみ箱へ行くことも見抜いていました。
飼い主が「もう要らないね」と聞くと冠羽を逆立てて不快な想いを仕草や鳴き声のトーンで教えてくれました。
彼の亡き後は私が愛用して引き継いで使用しています。
インコと暮らす生活はわたしは琉夏で3代目でした。だから網戸を必ず閉めるのが癖で当然でした。
琉夏が消えて1年くらい経過して気が付いたのは網戸を触れた後に開けたままで慣れていたことで、開けっぱなしに目が留まったのは風が桜の花びらを揺らすころでした。
網戸を開けっぱなしにしていたある日でした。
窓から強風にあおられて階上のあるマンション自宅から箱のティッシュが飛ばされたのです。
飛ばされたことを知ったのは地上に降りて仕事に行く朝に窓から落ちた自分のティッシューの潰れた箱を見つけたからでした。
この件の出来事以来です。
わたしは「ふきん掛け」のかかる窓の網戸だけは閉めきるようになりました。
「ふきん掛け」が琉夏のように。
「ふきん掛け」が強風で地上に落ちることがまるで琉夏のボディーが墜落するような感覚で奪われるような怖さで胸奥を鷲つかみにしてしまうからです。
琉夏が亡くなった後の数ケ月は泣いてばかりいた涙もだんだんと落ち着いて泣かなくなりました。
しかし万が一にも「ふきん掛け」が目の前で飛ばされて居なくなったら声をあげて泣くだろうと思うのです。
時折です。
琉夏に無性に会いたくなるときがあります。
泣き虫になって会いたくなって弱虫になる自分の虫がどこからかやってきます。そして無性に会いたくなるときがあります。
琉夏と暮らした延長線上を生きているので何か成功したときには琉夏に褒めてもらいたくなります。
インコとあまり意識したことのない対象です。インコらしからぬ行動や脳の力量へ成長していった奴と無性に話したくなります。
だから時折です。
無性に会いたくなる虫がどこからか湧いてきて波のにように打ちつけます。
すべてが変わっても変わらない飼い主の魂と重なり合って一緒にいます。
あなたにとっての大切な存在が命尽きた者でもすべてが変わってもあなたとあなたの大切な存在は永遠です。