Dr.誠です。
今日はちょっと難しい話を。
Dr.が読んだ方が面白い記事かもしれません。
2022年の診療報酬改定。
2年に1回行われる改定は往々にして、医療現場の実情を無視し、国の勝手な医療費抑制の意図ばかりで行われ、とにかく問題点ばかりなのが通常運転なのですが、今回一番問題となってくるのは
「リフィル処方箋」
(長くて3回まで、医師が指定した期間は患者が繰り返し使える処方箋)という制度です。今後医療現場で起こるであろう恐ろしい問題を今回、私が指摘しておこうと思います。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20220322-00287730
まずこの「リフィル処方箋」というものはどういうものなのか。これはアメリカなどでよく行われている手法で、病院に患者さんが半年~1年に1回程度かかる間、
薬局が主体となって
健康管理をするための調剤制度です。繰り返し薬局に薬を取りに来させ、調剤料をもらいながら健康管理をする、というもの。しかしこれは、アメリカの薬局ではきちんと薬剤師が生活習慣病などの指導ができるという前提があるからこそ成り立っている制度です。そのまま日本に持ち込んだからといってうまく行くとは限りません。
そして今回、この制度をわが国政府が「医療費抑制のために」(不意打ち的に)持ち込んだわけですが、問題はこれによって
多くの医療機関の存続が危うくなる
こと、そして、患者さんの健康管理に対して今までのようには目が行き届かなくなる可能性が高いということです。
その理由は大きく2つあります。
①現在の医療機関(特に開業医)の再診料は、昔の14日処方~1ヶ月処方を想定した
大変安い公定価格
のままです。受診頻度が落ちれば、例えばわずかな数の高齢開業医が支えている村落などは、医療提供体制自体が崩壊する危険性があります。
また、②大病院を中心に
超長期処方
(最大で30日×3回が想定されていますが、90日×3回は「禁じられてはいません」)が行われ、なしくずし的に開業医でも患者の求めるままに処方期間=受診期間が伸びる可能性があるということです。市民の健康を「医師の視点で」ちゃんと守るということが難しくなっていくと思われます。
「血圧の薬を貰うだけ」に行っていたクリニックで、たまたま癌を見つけたり狭心症を早期発見したりということはよくありますし、これこそが医療機関に頻繁に受診する意義そのものだったりします。そうした「日本の独特のバランス感」でなりたっていた「世界一の健康寿命」の前提が、この制度によって崩れ去る可能性が高い、ということです。
さらにもう一点。
この制度は病院から薬局へと、生活習慣病管理の拠点と権限を委譲するという役割がありますが、今その薬局で起きている
「危機」
についても知っておく必要があります。
2年に1回行われる診療報酬改定では、毎回のように薬価改定(引き下げ)が行われ、その度ごとに在庫の薬剤は資産価値が目減りしていっています。3/31のまでの薬価は次年度の4/1になったとたんに何%も切り下げられます。1日の差で100万円単位の損が出る門前薬局もあると聞きます。今回、知人の門前薬局が、医院の目の前にある唯一の存在であるにも関わらず、薬価改定や制度改定に耐えられず
「撤退を考えている」
という話を、2件ほど聞きました。今は門前の薬局も経営が苦しいのです。
では、その「リフィル処方箋」という薬局にとって美味しい制度を目にしたとき、薬局はどう動くでしょうか。
おそらくは、
「医院への受診の頻度を減らし、
薬局で薬を貰いましょう
(その方が安くなるよ)」というキャンペーンが、患者さんに対して医院の知らないところで行われる可能性が高いと考えられます(それぐらい門前薬局も追い詰められているということです)。そして場合によっては「リフィル処方箋を医院が一定数投入しなければ、我々門前は貴院から撤退せざるを得ない」と取引材料として薬局側が使ってくることも想定されます。つまり、国の「医療費抑制」を目的としたリフィル処方箋の制度導入によって、
医院と門前薬局が『分断』され、
高笑いするのは国ばかり、ということになりかねないということです。
私は決して、薬局や薬剤師さんを攻撃しようという意図はありません。ただ、この制度によって、
患者さんに対して
「いい医療を提供したいだけだ」
と願う職種が
分断されてしまうであろうこと
が火を見るよりも明らかですし、こうやって「分担して統治する」というのは権力の常套手段ですから、クソったれ政府がやりやがったな、という感想しか湧いてきません。
さて、では我々はどうするべきなのか。
まずは、こうした問題点を
多くの医療関係者に周知
し、誰がどういう意図でこの制度を持ち込み、なぜこんな医療体制になっていて、しかも国は患者さんの健康には全く責任をもとうとしていないことを、きちんと我々医療者の共通認識にしていくことだと思います。現場を守っているのは「我々」です。いくらマスコミや政府がスケープゴートにしようとも、住民の命と健康を責任をもって守っているのは「我々」なんです。
そしてこういうときだからこそ、
医療界が力を合わせて
戦わないといけない
と思います。国が医療費を削り、社会保障費を削り、その削ったお金で何をしているかといえば、献金してくれる大企業の法人税を減税したり、ちゃんと検証がなされていないような政策(マイナポイント2兆円、アベノマスク500億円など)に湯水のごとく使ったり、といった有り様です。医療費はこれだけ絞り上げて1000~2000億円も無理やり減らしているというのに。あまりにバランスを欠く姿勢だと言わざるを得ません。
今なんとか保たれている
医療現場のバランス
を、全て崩壊させてしまう危険性のある「リフィル処方箋」の安易な利用には、ぜひ皆さん、反対してください。これは大病院の先生方にもぜひお願いしたいことです。開業医の現場が混乱して困るのは、病院の先生方にもご理解いただけることだと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。
ちなみにうちではもちろん
リフィル処方箋は出しませんので悪しからず。





















