「こうなったらどうしよう・・・」といった「心配」や「不安」は、
ある種の恐怖であり、コントロールが難しい感情です。
一度、心配 や 不安に心を捕らわれてしまうと、容易には抜け出せず、
頭の中が 心配 と 不安でいっぱいになってしまいます。
短期間で解決できる事柄 であれば、大きな影響までは出ないでしょうが、
簡単には解決できない問題で、長期間にわたり 継続するようだと、
注意が必要です。
仕事に身が入らないなど、生活に支障が出るばかりか、
最悪、精神を疲弊し、うつ状態になってしまうことも。
では、そのような長期に渡る 心配 や 不安には
どう対処すれば良いのでしょうか?
ネガティブシュミレーションとポジティブシンキング
心配 や 不安を「とりあえず 忘れよう」、「後で考えよう」と、
後回しにしよう としても、
あなたの脳は、重要事項 だと認識しているため、
「いやいや、大事なことだから すぐに対処して!」と、
忘れたり 後回しにする ことは容易なこと ではありません。
むしろ、脳は、「早くしろ!早くしろ!」と指令を出し続け、
精神的なストレスが 加速度的に 溜まっていってしまうでしょう。
では、どうするか?
逃げられない のであれば、正面から向き合う ほかありません。
心配事、不安な気持ち に対して、あえて、自分から目を向けて、
正面から向き合い、深く考えていくのです。
そもそも、心配 と 不安、とは何なのか?
例えば、「どれにしようかな」と“迷っている”のと、
“悩んでいる”のは同じように見えるかもしれません。
ですが、この二つには 実は明確な違いがあります。
「迷い」は、
「目的自体が不明瞭で 何を どうすれば良いのかわからない」
これが迷い。
それに対し、
「悩み」は、
「目的はハッキリしている。でも、どうやって
目的を達すれば良いのか わからない。」
これが悩み。
そして、迷い と 悩みに違いがあるように、
心配 と 不安 も明確に違う概念です。
不安とは、「何に対して 心配しているのか わからない」という状態。
胸のもやもやの原因、心配の“元”が 何なのかわからない。
「迷い」に近い概念です。
心配は、その心の もやもやの原因、正体はわかってる。
でも、どうしていいかは わからない。こちらは「悩み」に近いです。
このような、原因が「わからない」とか、どうしていいか「わからない」
という、「わからない」という正体不明のもの に対して、
人は 恐怖を抱いてしまうものです。
①不安の元、原因を見つけ、考えうる「最悪」を想定する
正体不明のもの に対しては、対処のしようがありません。
ですので、まずは、正体のわからない“不安”の正体を見極め、
対処可能な、「心配」へと変換していくのが先決です。
まず、自分が不安に思っていることの正体を 見極めるために
不安に思っている全ての不安を 書き出す必要があります。
大きめの紙と、ペンを用意して、難しく考えずに、
思いつく限りの不安を 書き出して いってください。
もともと正体が わからないものです。漠然としていて かまいません。
こんな不安、あんな不安、こんな気持ち、あんな気持ちと、
頭に浮かんだ単語でも 文章でも、何でもいいので 書き留めてください。
仕事のこと、家庭のこと、お金のこと、将来のこと、人間関係について、
いろいろな不安があると思います。
もちろん、無理に 頭を絞ってまで ひねり出す必要は、ありません。
あなたが、“今 感じている不安”を解消していくのが 目的なので、
少し考えれば出てくる程度 のものだけで大丈夫です。
さて、頭にある「不安」をすべて書き出したなら、
今度は、その不安の元を探っていきます。
その不安は、何に起因するものなのか を考えてみましょう。
とは言っても、何も 難しく考えることはありません。
例えば、
「クレーマーの家に 謝罪に行かなくてはいけない」
という不安があったとします。
それまでは、「嫌だな」「不安だな」「行きたくないな」と、
漠然と思っていたとしても、
「クレーマーの家に 謝罪に行かなくてはいけない」と、
文字として、目に見える形で書き表したことで、
「すごく怒ってたしな・・・また怒鳴られそう」
「あの人、そもそも人の話聞く気がないしな。謝っても納得しなさそう」
「またギャーギャーと騒がれるのかな。憂鬱だな」
と、その「不安」が どんな「心配」に起因するものなのか、
考えるまでもなく、自然と 連想されてくるでしょう。
この不安の正体である「心配」もすべて書き加えていきます。
この時、出来る限りネガティブに「ああなったらどうしよう」
「こうなったら最悪だ」と想像を働かせ、常に最悪を想定して
悲観的かつ具体的に紙に書き出しておきます。
「怒鳴られたらどうしよう」という心配があるなら、
もっとネガティブに、
「怒鳴って殴りかかってきたらどうしよう」
「刃物を持ち出して来たら・・・」
と、悲観的に、悲観的に 考えておきましょう。
このように、最悪のケースを想定するのを
「ネガティブシミュレーション」と言います。
②見つけた“心配の原因”の解決策を考える
一通り、書き出し終わったら、「どうしよう」の部分、
つまり、その心配は、どうなったら解決するのか?どうなったら
その悩みから解放されるのか?という解決策を考えていきます。
例えば、「勉強が嫌だ!どうしよう!」というなら、
「では、どうしたら好きになるのか?」
⇒「勉強ができたらいい」
「では、どうしたら勉強ができるようになる?」
⇒「例えば歴史なら、歴史漫画を活用するなど、
楽しく学べる方法を探してみてはどうか」
⇒「勉強が好きという人や 嫌いだったけど 克服して、
できるようになった人に、やり方やコツを聞いてみよう」
などと具体的に考えていきます。
この、どうしたらよいのかという解決策も思いつくまま、
すべて書き出していきます。
一つの心配に対して、解決策は一つとは限らないので、
いくつでも、思いつく限り書いていきましょう。
10個の不安 があれば10個 の、20個の不安 があれば20個 の、
心配を解消するまでの道筋 をつけたり、いざ、心配事が
現実になってしまった場合の 対応策を 予め考えておきます。
「こうなったらどうしよう・・・よし、こうしよう!」と、
考えうる、最悪の想定に対して、すべて対策を考えておけば、
「後はもう、考えておいた通りに動くだけだ。なんの心配もない」
とポジティブに考えることができるのです。
このように、ポジティブに物事を考えていくことを
「ポジティブシンキング」といいます。
余談ですが、自己啓発の本などで、この「ポジティブシンキング」のみが
クローズアップされてしまっている ことが よくあります。
そのため、「ネガティブシミュレーション」の部分が 抜け落ちて
しまっており、具体的な 想定 と 対策 がないまま、
「大丈夫、大丈夫、ポジティブシンキングだ!」
と、不安 や 心配 から目を背けるだけの、「現実逃避」を
ポジティブシンキングだと思っている方もいらっしゃるようです。
「ポジティブシンキング」は「ネガティブシミュレーション」と
必ず1セットにして効果を発揮するものです。
自己啓発本などでポジティブシンキングだけを
学ばれてしまった方は、是非、ご注意ください。
解決方法が思いつかない場合には
当然ですが、様々な理由で解決の難しい問題もあります。
例えば、様々な人々の思惑が 複雑に絡み合う問題だったり、
または、「不治の病を治したい」といった、技術的に難しい問題であったり
または、「大地震がおきたら・・・」という、取り留めもない問題であったり。
そのような 解決の難しい問題については、とにかく、
「今、できることを考え、今を 全力で生きていく」しかないでしょう。
不治の病は いつ治療法が確立されるか なんてわからないし、
地震だって 未然に防ぐことは愚か、いつ 起きるのか すらわかりません。
家を補強したり、非常食を用意したり、できることは できる限り
やれば良いですが、地震の心配を 解決することはできないでしょう。
だからと言って、そんな 分からない事のために 心を砕いて、
ビクビクしてばかりいては、人生の 貴重な時間を
無駄にしてしまうことになります。
むしろ、無駄にしてしまった人生の時間を 後悔する時が
将来、確実に来てしまう事でしょう。
その確実に来る 後悔の方をこそ、危惧してほしいと思います。
今現在を、全力で生きる。今、出来ることを考え、それに集中する。
ただの根性論のように 聞こえるかもしれません。
ですが、今、“できること” と “できないこと”は確実に存在します。
ならば、今、「できること」、「したいこと」、「するべきこと」
そういった、“自分にとって優先順位の高いこと”に対して行動していく
方が、“解決できないこと”に時間を使うよりも有意義では ないでしょうか。