総需要曲線は右上がり? | ゴブリンの洞窟
最近、TN氏に対する風当たりが強まってきた。
各所で害悪論が展開され、三橋貴明氏への悪影響が懸念されている。要するにTNがいなければ俺たちの三橋は間違っていなかったんだ!...ということらしい。


...いやぁ、元々同類じゃね?


さて、TN氏の主張はTPP亡国論からもわかるように反自由貿易だ。安い外国製品が大量に輸入されるとデフレになる...という「輸入デフレ害悪論」だ。この主張は、いわゆる保守系...というより嫌韓・反中な人たちに広く受け入れられた。そりゃあそうだ。

まぁ、ゆうこりんがどう思われようが構わないが、前回の記事で、この「輸入デフレ害悪論」に、彼らの需給関係に拘ったロジックで少しばかり反論を試みてみた。希少性が高ければ価格は上がり、低ければ下がる。ただ、これは上手くいかなかった。


なぜ需要曲線は右下がりなのだろう?
価格が下がれば需要が増え、上がれば減ると言えるだろう。だから、物価が下がれば需要は増えると言えるんじゃないの?


■[クルーグマンマクロ経済学]第10章 総供給と総需要(2) ~事務屋稼業~
http://d.hatena.ne.jp/JD-1976/20091006/p1
なんで総需要曲線は右下がりになるんだろう? えー、そんなのあたりまえでしょ、と思うかもしれない。財の値段が下がれば需要量はふえるに決まってるんじゃないの? 残念ですが、それはまちがい。ある特定の財における需要法則ってのは、それ以外の財の価格が変わらないと仮定したとき、需要量がどんなふうに変わるのかを示したものだ。ある特定の財の値段が下がったときに需要量がふえるいちばんの理由は、消費者がほかの財から乗りかえるようになるためなんだ。

 総需要曲線を理解するには、すべての最終財の価格がいっぺんに変わる状況を考えなきゃならない。じゃあ、なんで物価水準が上がると総需要量は減るんだろうか。おもな理由はふたつ、物価変動の資産効果と利子率効果だ。


なぜ総需要曲線は右下がりなのだろう?
例えば物価水準が下落すると資産の価値は目減りする。買えるものが少なくなり消費を控えるようになる。これが物価変動の資産効果(#1)だ。また同様に物価水準が上昇した場合、借入れを増やしたりして貨幣需要が増えて利子率が上がる。利子率が上がると借入のコストがふえるから、企業は投資支出を減らす(#2)だろう。これが物価変動の利子率効果だ。

このように、物価水準が上がると投資支出(I)と消費支出(C)(#3)小さくなって、財・サービスの需要量が減少する。これで右下がりの需要曲線が得られることになる。

ならば前回の記事のどこが問題なのだろうか?右下がりである以上、物価と需要の間には負の関係性があることに変わりはない。


Debt,Deleveraging,and Liquidity trap」 (Krugman、Eggertson)(#4)
http://www.princeton.edu/~pkrugman/debt_deleveraging_ge_pk.pdf (pdf注意)


コメント欄で教えていただいたが流動性の罠においては総需要曲線は右上がりらしい。
フィッシャー方程式(実質利子率 = 名目利子率 + 期待インフレ率)から、ゼロ金利制約下においてはデフレは実質金利が高くなって投資は抑制される。フィッシャー効果は非対称になる。


う~ん、ネタのつもりだった(#5)んだけどね。
まさかKrugmanの論文に同じグラフ図があるとは思わなかった。ただ内容は読めないしイマイチ釈然としない。結局は物価が上がると総需要が増えるという話だ。本当に総需要曲線は右上がりなのだろうか?

総需要曲線は財市場を表すIS曲線と貨幣市場を表すLM曲線によって求められる(#6)

物価が下落する(P0⇒P1)と実質貨幣供給量が増加するのでLM 曲線は右にシフトする。均衡点はE0⇒E1と移動しGDPはY0⇒Y1へと増えることになる。これを総需要のグラフに落とし込んでP0とP1で結ぶと右下がりの総需要曲線が導き出せる。

では、これが流動性の罠ではどうなるだろうか?


LM曲線を右へシフトさせても需要は増えない。デフレでは物価が下がるだけ(P1⇒P2)となってAD曲線は垂直となる。

この時、短期総供給曲線を右へシフトさせると需要は変わらず物価水価が下がるだけとなる。右上がりではないが先のKrugman-Eggertson論文と同じ結果を得られた。(#7)


ただ、短期総供給曲線をシフトさせるのは何だろう?安い輸入品が大量に流入するとSRASが右にシフトするだろうか。どちらかと言うと長期総供給曲線が右にシフトするという気がするが、そうしたらどうなるんだ?垂直の需要曲線と垂直の供給曲線はどこで交わるんだろうか?

今度はASか...orz
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#1) ピグー効果とは ただ、これはあまり重視されていないようだ
#2) 利子率は貨幣を保有することの機会費用。貨幣市場において利子率が上昇すると貨幣の保有する費用が増加し貨幣需要は減少する。(参照)
#3) 実際には2000年代のデフレ期において減ったのは投資(I)であって消費(C)は増えている。投資は利子率に依存していると言えるが消費は?
#4) この論文に否定的な意見
#5) デフレの正体見たり!
http://ameblo.jp/inemuri-papa/entry-11596508029.html
ただ菅原氏のモデルでは物価が下落(long-run)するデフレなので総供給曲線(AS)は垂直としているので政策効果は反対になっている。

もっとも価格を賃金と置き換えれば硬直的(short-run)となり不況時は水平となる...はずだ。
#6) 参照:http://www2.kumagaku.ac.jp/teacher/~sasayama/macroecon/lecture16.html
#7) これもネタw やっぱり右上がりはおかしいと思って作ってみたが、これも変だな...。一応断っておくがトップページにも書いてあるようにこのブログには資料的価値はありません...。(画像が表示されていなかったので直した)