20. 貯水槽端 | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

部屋から持ってきた、2つのバケツと1つのポリタンクを手に貯水槽へ向かう。

近所にあるお弁当屋のおじさんが水を汲んでいる最中だった。

おじさんは、水を汲み終わり自分達と入れ替わると、「大丈夫だった?」と

声をかけてくれる。「はい、家の中はめちゃくちゃですけど。」

そこから始まる情報交換を兼ねた井戸端会議ならぬ貯水槽端会議。


その日は新聞が届いたそうで、そこに掲載された写真はとにかく酷いものだ

という。今後、大きな余震がくるそうだから気をつけるようにとも言っていた。

おじさんの母親が海側の地域に住んでいて、地震以降連絡がとれないという。

「多分もうだめだろうな。」と、大きな表情の変化を見せずに言うおじさんの

心中は、理解したいと思っても出来るものではないだろう。


ちょうどそこへ、自分が時々お世話になっている近所の美容室の女の子二人

が来ていた。

女の子達は、車で若林区役所の辺りを見てきたそうだ。

彼女達の話によると、その辺りは水のためぐちゃぐちゃになっていたという。

貯水槽の前に集まっていた人達の顔はみな険しいものだった。


自分達が水を汲み終わるのと同時に、その場は解散した。

水汲みが終わったら、お弁当屋のおじさんに新聞を見せてもらいに行こう。