水で満たされたバケツを両手に階段を上り始める。
友人が運んでいるポリタンクは20リットル以上入るそうで、さすがに辛そうだ。
二度目の踊り場を見た時点で既に息はあがっていた。
バケツの持ち手が指の付け根に食い込む。腕の筋がピキピキする。
肩が痛い、腰が痛い、指が痛い。我慢出来ずに一旦休憩。
先が思いやられる。我が家への道のりがいつもよりやけに遠い。
まだ息が整わないまま、再度登り始める。
もう少し、あと少し。
やっとのことで玄関前に到着。
自分の手にくっきりと、持ち手で圧迫した肉の形を残して、一旦バケツは
離れて行った。
当面の生活用水確保のために、「あと2往復しようか。」 と言う友人。
自分は考えるのをやめた。
この後二人は、普段より遥かに遠い道のりを、全身で味わった。