今の自分にはやることが見つからない。ならば、さっさと寝てしまおうか。
車外気温の表示は ”1度”
残り少ないガソリンを節約するため、エンジンをとめた。
携帯をアームレストの窪みに入れると、シートを倒せるだけ倒す。
ヘッドレストのせいで、頭の納まりが悪い。首が痛い。
目を閉じてしまえばそのうち眠れるかな。
時々くる余震に車ごと揺られながら、とにかく目を閉じ続ける。
・・・足元がスースーする ・・・ 腰の辺りもスースーする ・・・要するに
寒い。
隙間を塞ぐように布団を身体に巻きつけてはみたものの、隙間から侵入
する冷気は防ぎようがなかった。
ふと考える。避難所の中のほうが、車の中よりは幾分温かいかな・・・と。
しかし、その他の条件はこちらの方がましなはず・・・と自分に言い聞かせ
避難所を出た事を後悔はしない、したくない。
時々体勢を変えながら、とにかく眠る努力をしてみる。
・・・足が冷たい ・・・ 眠れない ・・・ 頭痛まで・・・してきたな。
視線の先に見える車の窓ガラスが、曇ってみえる。その曇りは微かな外の
明かりの加減でキラキラ光っているようだ。
ごそごそと身体の向きを変えると、隣で横になっている友人が大きめの
寝息をたてて寝ている。羨ましいけど憎たらしい。
自分はさっぱり眠れないのに。
油性ペンでも持っていたなら、顔にらくがきしてやりたい。クソッ!
静寂の中、突然自分の携帯が「ブーブーブー」といいながら震えだした。
アームレストに触れる携帯の振動音が、異様に大きく車中に響く。
自分もかなり焦ったが、うとうとしていた友人は、更にビックリ飛び起きた。
慌てて携帯のメールを開くと、それは ”エリアメール” というやつで、
要するに緊急地震速報だ。
二人で身構えてはみたものの、数分たっても揺れは来ず、徐々に緊張が
解けていく。
『最初に大地震が起きた時には、このメールが来ていたのだろうか?』
確認してみると、来ていた。
最初の地震の時、自分の傍らに携帯を置いていなかった事を少し悔んだ。
今はまだ夜明け前。
外の気温は既に氷点下。
もう少し眠る努力をしてみよう。