車に戻り思い出す。ガソリンはほとんど入っていなかった。きついな。
車の周りは高い建物で囲まれているため、どこか広い駐車場へ移動
しよう。
二人で、近場のだだっ広い駐車場を思い出す。そこなら周りに高い建物
は無いから、大きな余震が来ても建造物の下敷きになることはない。
その点だけは安心だ。
考えが一致して出発。
エンジンが動いている間は携帯の充電が出来る。ラジオも聴ける。
暖房もいれられる。
すぐに目的の駐車場に到着し、車の中が温まるまでエンジンを点けたまま
ラジオを聞いた。自宅から引きずり出してきた毛布も早速使う。
携帯を開いて ”yahoo!” に接続すると、地震関連の言葉が並んでいた。
次々に起こる地震の情報を探し出す。
震源地は、東日本の太平洋側を中心に広く分布している事を知る。
なんかおかしい、”異常” だ。
今自分が知りたい情報に関連する言葉を探しながら、携帯の画面上で
視線を移動させると、 ”若林区” という文字が目に入った。
詳しい情報を表示すると、
”宮城県仙台市若林区荒浜の海岸で200~300人の多数の水死体発見”
という内容。
『・・・はぁ・・・!?』 急に信用しろという方が無理な話だ。
頭の中は 『悪い冗談はやめてくれ』 という思いだけ。
しかし、ラジオからは同じ内容を読み上げる声が聞こえた。本当なのか。
気持ちがずっしりと沈み込んでいく。
身近なところで、しかし自分の見えない所で、考もつかないような事態が
起きているのだ。
いつまでたっても終わりそうにない余震に身体も心も揺すられる。
地震の後、ライフラインが全て途絶えている事意外には、街並みの大きな
変化を目の当たりにしていない自分。
本当の ”恐ろしさ” ”大変さ” を思い知るのは、これからだ。