7. 情報が・・・ない | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

特にやる事も思いつかず、未だに何の情報も得られぬまま、ただ床を

眺めていた。会話もほとんどない。


右隣に座っていた老婦人が、「地震、マグニチュード8.8だそうよ。」と

言いながら、ラジオのスピーカーを自分の方に向けてくれていた。

情報を得る物が何もない自分達を気遣ってくれたのだろう。

好意に甘えさせていただき、ラジオから出てくる声に耳をよせる。

どうやら、普段自分達が警戒していた宮城県沖地震とは異なるらしい事、

とんでもなく大きな地震だということはわかった。


老婦人の前に座っていた年配の御婦人が小さくて薄いポータブルテレビ

を見ながら自分達に、「全国で津波注意報が出ている。」と言って、画面を

見せてくれた。

テレビの画面を覗き込むと、そこには太平洋側の海岸全てに着色された

日本地図が映っている。

詳しい事は解らないが、とにかくとんでもない事になっていると理解する。

もっと詳しい情報がほしい。携帯のインターネットはなかなか接続出来ず、

電話は勿論、メールさえ発信出来ない。自分には出来る事がない。

携帯画面を見ながら何か操作している若い男性が数人視界に入る。

ワンセグか?機種が違うと電波の入りが違うのか?それとも暇つぶしの

ゲームか?等と勝手な想像をしてみるが、今の自分は携帯バッテリーを

温存しなくてはならない。 我慢だ。


避難所に来てから、どのくらい時間が経ったのかすらわからない。

この状態では、時間という概念に意味を見い出せない。

少しずつ体育館の中が薄暗くなっていくように感じられ、『もう夕方が近

いのかな』などと考える。


窓の外では雪がちらついていた。