8. 避難所を照らすのは | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

ずっと俯いたままの自分の視界。薄暗い体育館の床だけが映る。

その視界が急に、ほんのりと明るくなった。

明かりのもとが知りたくて顔を上げると、いつのまにか窓の外は大雪。

窓から見えるはずの外の景色は、真っ白な大粒の雪達にさえぎられ

ていた。


日の光に照らされて白く光る一面の雪。その光が、薄暗い体育館を

ほんのりと明るくするほどに、窓から差し込んでいる。


人々は、自分の上に積もった雪を払い落しながら、次々と避難所へ

入ってくる。ライフラインを全て絶たれたうえ、頻繁に訪れる余震。

”避難所へ行く” という選択をした地域の人々が、日暮れを前にして、

集まっているのだ。

みんな、自宅から布団や毛布、買い物かごにはたくさん食糧や飲み物

を詰め込んで持ってきていた。

『自分ももっと、食糧や毛布を持ってくるべきだったな』などと、少しばかり

後悔しながら、再び容赦なく降ってくる雪を眺め、『なにも、こんな日に

これほど降ることもないだろうに』と思ったりする。 しかし・・・。


人工の明かりが全くない体育館。

今、この薄暗い避難所を照らしているのは、夕方の空を舞う無数の冷たい

雪だった。