ずっと俯いたままの自分の視界。薄暗い体育館の床だけが映る。
その視界が急に、ほんのりと明るくなった。
明かりのもとが知りたくて顔を上げると、いつのまにか窓の外は大雪。
窓から見えるはずの外の景色は、真っ白な大粒の雪達にさえぎられ
ていた。
日の光に照らされて白く光る一面の雪。その光が、薄暗い体育館を
ほんのりと明るくするほどに、窓から差し込んでいる。
人々は、自分の上に積もった雪を払い落しながら、次々と避難所へ
入ってくる。ライフラインを全て絶たれたうえ、頻繁に訪れる余震。
”避難所へ行く” という選択をした地域の人々が、日暮れを前にして、
集まっているのだ。
みんな、自宅から布団や毛布、買い物かごにはたくさん食糧や飲み物
を詰め込んで持ってきていた。
『自分ももっと、食糧や毛布を持ってくるべきだったな』などと、少しばかり
後悔しながら、再び容赦なく降ってくる雪を眺め、『なにも、こんな日に
これほど降ることもないだろうに』と思ったりする。 しかし・・・。
人工の明かりが全くない体育館。
今、この薄暗い避難所を照らしているのは、夕方の空を舞う無数の冷たい
雪だった。