4. 初めての避難所 | 憂さ憂さうさぎ

憂さ憂さうさぎ

世の中は憂さだらけ!
はき出す場所のない憂さを、ここで晴らしてみましょうか。

避難所へ到着したのは、まだ明るい時間帯だった。

避難所には自分の友人も来ていた。

非難している人はまだ少なく、『避難しなくても大丈夫だったのか?』

と感じるほどだった。とにかく、寄り掛かれる場所に座ろうと、しばらく

体育館の中をうろうろ彷徨った後、バスケットゴールの真下を避けて

とりあえず二人で壁際の空いているスペースに納まり、膝を抱えた。

床がやけに固く冷たい。尻が痛い。

少しでも寒さをしのぐため、持参した数枚の上着で自分の体を覆った。

 

避難所の中には、地震に関する情報を得られるものが何もなかった。

時折訪れる大きな余震の度に、体育館の天井で揺れる照明に視線を

向け、『落ちてくるなよ』と呟いた。

その時避難所にいる人達の視線の大半が天井の照明に向いていた。

 

しばらくすると、体育館に大きな段ボールがいくつか運び込まれた。

毛布だ。

「毛布を配ります。小さいお子さんやお年寄り優先です。」という声に、

人々が集まって行く。

自分は ”小さい子供” じゃなければ ”お年寄り” でもない。壁に

もたれたまま、毛布に集まっていく人達をしばらくの間ながめていた。

 

少したって、毛布の周りから人が減ったのを見計らい、「まだ毛布が

残っていたらもらってくるから」と言って立ち上がる。

近づいていくと、「段ボールも解体して使ってください。」という声がした。

見ると、段ボール数個と、毛布が入っていたと思われる銀色の袋が

一面に散乱している。

『段ボールでもいいかな』と思い、近くにあったそれに手を伸ばしたが、

自分の手が届く前に他の人が持って行った。

足元にあった銀色の袋を拾うため、屈んで手を伸ばそうとすると、あっと

いう間に無くなっていく。それらを手にして去っていく人々の顔はみな

怖いと思えるほど真剣で 『弱肉強食』 そんな言葉が脳裏をよぎる。

自分のように、消極的で行動がゆっくりしていては、何も手に入らない

ということか・・・。

 

すぐ近くで銀色の袋を開封している男性に、「まだ、毛布ありますか?」

と声をかけたが、彼はこちらを振り向くこともなく、返事もなかった。

優しさや気遣い等といったものが一切感じられないこの一画に立ち、

沈んだ気持ちで周りを見渡す。

 

少し離れた場所に、開封されたばかりの数枚の毛布が積まれていて、

それをもらうために歩み寄る。毛布は二枚。それをつかもうとした時、視界

に人の姿がはいってきた。

『毛布を2枚とも持って行ってしまったら、他の人が使えなくなるのだろうな』

と感じた瞬間、自分の手は毛布を一枚だけつかんでいた。

 

運よく掴むことのできた一枚の毛布と曇った心を抱えながら、友人のもとへ

戻って行く。