もとの場所へ戻って、友人に一枚だけ毛布を持ってきた経緯を友人に
話し、「一緒に毛布を使おう」と言うと、友人は優しく微笑みながら言った。
「うん、それでよかったんだよ。」ふっと心が軽くなる。
とにかく、痛くて固い氷のような床から逃れたくて、折りたたんだ毛布を
尻の下に敷き、二人並んで腰を下ろす。
自分の左側に座った友人は、冷え性の自分に上着を多めに掛けてくれた。
それにくるまって膝を抱える。二人とも口数は少ない。
自分の右隣では老婦人が毛布にくるまりながら、なおも寒そうにしてる。
友人は、その老婦人に「上着まだ持ってますから、お貸ししますよ?」
と声をかけ、自分が持っていた上着を差し出したが、そのご婦人は遠慮
している様子だった。
正面の少し離れたところに、鳥かごが見えた。子供二人を含む親子連れ。
食糧や飲み物、敷物等も持参していたようで、体育館の中程を広く使っている。
親の方は少々険しい顔つきだが、鳥かごを挟んで向かい合って座る子供達
の方は毛布に埋もれながら、一見はしゃいでいるようにも見える。
子供達は楽しそうに、避難所の毛布で鳥かごをくるみ始めた。
さっき自分が持ってくることを躊躇った、一枚の毛布の使い道・・・。