避難所へ行くと決めて、めちゃくちゃになった家の中から食べ物を探す。
見つけたのは、柿ピーとバナナ。
とりあえずで見つけた食糧と、水と貴重品を鞄につめこむと、厚手の上着
を数枚持って家をでた。家の鍵はかけておく。
避難所へ行く道すがら、窓ガラスや剥がれ落ちた壁の一部が歩道に散乱
している場所を数ヶ所通る。しかし、目に見えて『崩壊している』ような建物
は無かった。あれだけ揺れたのに、地震の被害は少なかったのか?という
考えが頭をよぎる。
どうしてなのか、道路の真ん中に鳩の死骸があって、その周りにまだ新し
い血と鳥の羽根が散らばっていた。
そんな道路を車が何台も通過していく。その車一台一台に一生懸命声を
かけている女性がいた。
その声に耳を傾けると「徐行してください。」というものだった。
地震の後家から出てきた人々が、道を行き来しているのだから、状況的に
徐行するのは当然だと思うのだが、車の運転手は”徐行”を意識しているのか
どうか・・・。
そんな車を見ながら、何故か不思議というか複雑というか、自分でもよく
わからない気持ちになっていた。
大きな通りへ出ると、全ての信号機が消えていて、『街ごと停電している』事
だけは解った。
もうすぐ、避難所だ。