ドバイのメイダン競馬場の芝コースについて書きたいと思います。
距離の設定とコース形態は下記図のとおり。
1週ちょうど2400mで、東京競馬場を横に引き延ばした様な感じです。
コーナーは綺麗な半円になっています。
メイダン競馬場の芝コースは、バミューダグラスをベースにペレニアルライグラスがオーバーシードされた馬場で、香港の沙田競馬場やハッピーバレー競馬場と同じ構成です。
バミューダグラスは、暖地型芝で温暖な地域の競馬場で主として使われる芝の品種で、ドバイや香港の他、アメリカの西海岸や南東部の芝コースでも使われています。
JRAの競馬場(函館と札幌を除く。)で使用されている野芝及びエクイターフと同様に、匍匐茎と地下茎を持ち横方向にも根を張る耐久性が強く、耐暑性、耐乾性に富み比較的管理がしやすい芝です。
ペレニアルライグラスは、発芽と初期成長が早く、種を蒔いてから短期間で芝生を作ることが出来ます。鮮やかな緑色で、光沢があり見栄えが良いです。
株立ち型で、根は下にのみ伸び横のつながりはありません。
芝自体は香港と同じ構成ですが、時計の出方は香港の方が速く、路盤は香港の方が堅く強い馬場作りになっていると思われます。
これはメイダン競馬場が11月から翌年の3月までと大体週1回5ヶ月間の開催であるのに比べ、香港は9月から翌年の7月までと週1回約10ヶ月間の開催があるので、芝の強度や壊れにくさに重点を置いた馬場造りになっているからだと思います。
匍匐茎型の暖地型芝に、株立ち型の寒地型芝をオーバーシードする馬場は、JRAの競馬場でも多く使われる馬場の形態であり、日本調教馬が好成績をあげられるのはこの辺もあると思います。
今年のメイダン競馬場は前哨戦群が開催されたスーパーサタデーにおいて、3レースあった芝のレース中、2レースでトラックレコードが出る速い馬場になっています。
ドバイシティオブゴールド(芝2410m、首G2) レコード2分26秒85(≒2分25秒6)
ナドアルシバターフスプリント(芝直線1200m) レコード1分08秒24(≒1分07秒0)
ジェベルハッタ(芝1800m、首G1) 1分47秒53(≒1分46秒3)
トラックレコード 2016ドバイデューティフリー(首G1)ジャスタウェイ 1分45秒52(≒1分44秒3)
(カッコ内は、JRAの計時方法換算。JRAは助走距離があり先頭の馬がゲートから5mの地点を通過してから計時開始、ドバイはゲートが動き始める瞬間から計時開始)
ペース等も有り単純に断言は出来ないですが、この馬場でトラックレコードより2秒遅いジェベルハッタ(首G1)のレベルは、勝利したのがブレアハウスというのも含めて低いと考えます。
以下、芝に関する参考資料
コレについては、また増補して記事にしたいと思います。
まずよく使われる「和芝(日本芝)」や「洋芝(西洋芝)」という区分はあまり適切で無いと思います。
一応、一般的に分類される和芝と洋芝の区分は以下の表のようになります。
競馬場における芝の比較としては、
気候・風土による、暖地型芝、寒地型芝の2区分
育成型の違いによる、匍匐(ほふく)茎型、根茎型、株立ち型の3区分
で区分するのが適切だと思います。
ここでは競馬場でよく用いられる、ノシバ(エクイターフ)やバミューダグラスのように匍匐茎と地下茎の両方を持つ芝について取り扱います。
上記の図のように根や茎が下に伸びるだけでは無く、横にも広がるようになっています。
根が縦だけで無く横に広がり網の目のようになるため、ある程度厚みのある層が出来ます。
これがマット状になり馬が走るときの支えとなり、馬場の強度とスピードが出る要因となります。横に根が広がっているため馬場が痛んでも、日光と気温と充分な水があればある程度自力で回復することが出来ます。
この匍匐茎と地下茎を持つ芝をメインとした競馬場が安定して速い馬場を生み出しています。
日本、香港、ドバイ、アメリカの西海岸と南東部等の温暖な地域において、芝コースのベースとして使用されています。
エクイターフはノシバを元にJRAが品種改良した種で、この匍匐茎・地下茎が発達し厚みのある強くしなやかな馬場になります。
ノシバやコウライシバは種子による育成が難しいため、匍匐茎や地下茎による栄養繁殖で育成してマット状の切り芝(ソッド)にして流通するものが多いです。
バミューダグラスは種子による育成もしやすく、耐暑性、耐旱性、踏圧やすり切れ圧にも強く、暖地型芝でありながら、西洋芝の柔らかさを併せ持ちます。
バミューダグラスの改良種で競馬場でも多く使われている、ティフトン・バミューダグラスはハイブリッド(交雑種)であるため種子で繁殖できず栄養繁殖のみで育成、ソッド等による流通しかできません。(アメリカのガルフストリームパーク競馬場などで採用)
<根茎型>
地中に根茎を伸ばして栄養繁殖で増えますが、匍匐茎型に比べると横の結束力は弱いです。
寒地型で暑さに弱いですが、寒さに強く半日陰でも育つ。
競馬場においては、ケンタッキーブルーグラスが有名で、その名の通りアメリカの中部地区から北の冷涼な地域において用いられます。
青みがかった美しい緑色が特徴。
<立ち株型>
寒さには強いですが暑さには弱いので、日本の本州以南ではコースのメインとなる芝としては使用できません。
JRAでは北海道の札幌、函館競馬場のメインとなる芝になります。
根は下にのみ伸び単独の株で育ちます。単独でソッドは作れないため、ソッドを作る場合は他種との混合になります。
ヨーロッパの競馬場の多くでは、寒地型芝しか育たないため、多くの競馬場では立ち株型のライグラス、ベントグラス、根茎型のケンタッキーブルーグラスが主体です。
アメリカの中部以北では、トールフェスク:65%、ペレニアルライグラス:25%、ブルーグラス:10%という混合の芝コースが多い気がしますね。