吹雪の恐ろしさは幾度となく経験した・・
次の一歩は崖下かも知れない・・
しかし、手の届く所にドアノブが有るかもしれないのだ。
私はその一歩が踏み出せなかった・・・
待ち合わせは「プリティー伊達」
全くヘンテコリンな名前である。
私は意外にも時間に几帳面で有る。
待ち合わせ等は一時間前に現地入りする。
店などの場合は店内には入らずに外で待つ。
時には店の周りをうろうろしていると不審者と間違われる事になるのだが・・・
その日も数時間前に現地入りした。
さっそく店を探し始めた。
しかし、探せど探せど何処にも見当たらないのである。
地図上ではピカソ本店の正面に記してある。
しかし無い!全く不思議である。
正面の店には「ファンキー小林」という看板?が出ている。
何処にもない・・・約束の時間は刻々と過ぎているではないか。
ついに約束の時間は過ぎてしまった・・・人間失格である。
私は項垂れ、太宰治の様に窓ガラスを見る。
自分の姿が映し出される。
全く情けない姿である・・?
そして・・・自分の姿の他に何か映っているものが目に入った。
「何だ?これは!」それは小さな文字であった。
そこには小さく「プリティー伊達」と書かれていたのである。
「はー!ここはファンキー小林では?」
私は故郷を思い出した・・・あの吹雪の夜の事だった。
雪道でワダチニ嵌り夜が明けるまで車の中にいた。
寒くてひもじいくて・・しかし寝てしまったら凍死する可能性もあると起きて耐え抜いた。
「ドン!ドン!」車を叩く音がした。
朝日が差し、車窓の雪がきらめき始めた頃だった。
「助かったのか?」私は自分の鼓動を確かめた・・・「生きている」
そして声が聞こえた・・「オメ―、何やってんだー」
親父の声である?
「救助隊と一緒に来たのかー」私はドアを開けて叫んだ。
「なに寝ぼけてんだー」そういうとサクサクと向こうに行ってしまうのである。
事態が分からず車外に出てビックリした。
なんと!そこは我が家(店)の駐車場だったのだ。
私は自分の家の駐車場で遭難していたのだった。
しかし何故両親が声を掛けなかったのか!
それはカーラジオのせいであった。
私は眠ったら死ぬと思い、音量を大きくしてラジオを聞いていた。
両親はその音を聞いて盛り上がってるなーと思ったそうである???
教訓1・・吹雪の日は出掛けない事!
教訓2・・自分の家の前の道を把握する事!良く考えたら何処に居るか分かる筈である。
教訓3・・夜中はラジオの音を小さくする事!一人なのに盛り上がっているように思われるから。
以上!
そして近所では「ファンキー小林」で通った店が実は「プリティー伊達」であった・・・
理由は・・・マスター本人に聞いて貰いたい。
私は取り合えず辿り着けるように看板を作ることにした。
強引に取り付けてこようと思う・・・
ふふふ・・・
さぞかしマスターの驚く顔が目に浮かぶようである・・・龍
