白い紐の絆と牛のたたき? | 版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆

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私が各地で出会った美味しくて不思議な一品をご紹介。さーて今日は何を食べようかな。

人間は体の欲しがる物を食べるべきである・・・


彼の体重は140kgを既に超えていた。


好きな物を食べられないぐらいなら生きている意味がない・・・


170cmの胴回りは彼の固い意志を象徴していた。




「ねえー、大東君、最近太ったんじゃないの?」


私は彼と仙台に来ていた・・勿論仕事である。


「ねえ、聞いているのかい?」


私の問いかけには一切返答がない。


今、現在、彼の耳を含む五感全てが眼下に広がる山海の幸だけに使われていた。




私は自分の携帯電話を時折気にしていた・・・


着信では無い、時間である・・


私は空港から直接この店に来たのである。


当然ホテルのチェックインを済ませていない・・そんな理由が有ったのだが、


彼と居酒屋で待ち合わせをした事は、失敗であった。


ホテルに連絡を入れ、私も腰を据える事になる・・




              仙台牛のたたき


版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆-牛のたたき




仙台は牛タンで有名だが、今日は仙台牛のたたきを注文した。


京菜をたっぷりと巻き込んでゴマドレッシングで頂いた。


ニンニクしょう油で食したいところだが、明日からの会場を入りを考えての事である。




「すみませーん!下しニンニク下さーい!」


大東君が物を食べる以外に口を開いた・・・どうやらこちらの世界に戻ってきたようである。


「凄いね、今日の食欲は」


私も良く食べるが、ここまでは真似のできない範囲である。


「明日からの仕事を頑張る為です!」




しかし、仕事の前にニンニク・・・?私は九州の事件?を思い出していた。


やはり前日にニンニクを食べてひんしゅくをかった時の事である。


「ニンニクは止めたら?」


私は優しく言ったのだが・・・彼は


「好きな物を我慢するくらいなら食べない方がましです!」


何とも、はて?説得力の無い言葉である。


そして彼はテーブルの上に一本の紐を持ち出してこう言った。


「この紐の目印が分かりますか?端から赤い目印まで170cmなんです」


確かに白い紐に赤いラインが入っている・・手品でも始めるつもりなのだろうか?




そして、私は驚いた・・彼のウエストが170cmであるという事と、


出張から戻ってきて170cm以上太ったら、離婚よと奥さんに紐を待たされた事にである。


そして、何故?今のタイミングで紐を出したかであった。


その日、彼の食欲は満たされたが、仕事の打ち合わせは満たされ無かったのである。




翌日、会場入りをして不思議な事に気付いた。


「あ、おはようございます!」元気な大東君がいた。


「おはよう!昨日は良く眠れた?」何時もの朝のあいさつ風景である・・・?


・・・?気のせいか彼の顔が細く見える・・いや、こけていると言った方が端的であろう。


昨日あれほど食べて・・何故ゆえに?




「ねえ、大東君、きみ少し痩せた?」自分の口から出た意外な言葉で驚いた。


「ハイ!」至って元気に答えてくれた。


「自分は生のニンニクを食べると下痢をするんです」・・・?


少し考えて・・「え!、じゃーあのニンニクは牛のたたきの為じゃなくて!」




そうなのである・・彼は瞬間ダイエット?の為にニンニクを食べたそうだ。


涙ぐましい話ではないか・・愛する妻と離れたくないばかりに・・


しかし、冷静に考えると食べなければ良いと思うのだが?




やがて一週間の催事が終わり東京まで一緒に帰ることにした。


那須塩原を通過した頃に目が覚めた・・私は仙台駅を出て直ぐに寝入った様であった。


「あー、次の停車駅は大宮か、大東君もうすぐ東京だね」


帰りの新幹線では通路を挟んだ席に座っていた。


「あ、ハイ!」・・焦ったように返事をする。




彼は手に例の白い紐を持っているではないか・・しばし観察していると・・


端を縛り輪にして足に掛けた・・そして、引っ張った!


何をしているのだろう彼は?




「ねえ、何しているんだい?」思わず聞いてしまった。


「伸ばしているんです!うー!・・」


そうなのである、彼は瞬間ダイエット?に失敗したのであった。


そう、最後の手段で紐の方を伸ばしていたのである。


全く、涙ぐましい努力であった。




東京駅に着き、私は東海道・山陽新幹線に乗り換える。


「じゃあ、ここでお別れだね、次は都内だから家から通えるね・・奥さんに宜しく」


「ハイ、ではお気を付けて」・・彼はまだ紐を手にしていた。


「そうだ、大東君!メジャーで測られたら、どうするのー」




改札を通り抜け、手を振り、私はホームへと向かった。


エスカレーターの前でキャリーを持つ手を取り変えながら振り返ると


唖然とした顔で立ち尽くす彼が見えた。




彼の手から零れ落ちる白い紐はまるで一滴の涙の様であった・・・龍




PS:大東君夫婦は今日も仲良く奥さんの故郷に遊びに行っています・・マル