刺身盛り合わせ
今夜、思い出した仕事場は石川県K市であった。航空自衛隊K基地で有名だが、やはり石川県といえば工芸を思い浮かべる。私自身、作家であり、産地プロデューサをしている手前当然ではある。
だが、やはり食べ物に心は弾む。仕事が終わり一目散に居酒屋に直行する。昨夜行った店が大変美味しかった。日中も献立を考えていたくらいだ。
カニの刺身に、いしり燒き、フグ子とくれば、言うこと無し。そして私の目当ては刺身の盛り合わせである。
腰を抜かすほど「安い」「美味い」「ボリューム満点」なのだ。メニューに500円と書かれていたが、出てきたときにはツマ盛り一種の値段だと思った。
その時は五つ盛りあったので、注文し過ぎかと思ったほどだった。後の会計であらためて満足した。
私の田舎では冠婚葬祭のたびに刺身が出る、やはり、それはそれで美味いものだが、メインとなるとやや不思議でもある。当然、法事も然りである。
ある日、ROSEの常連から電話が有った。
私のせいで法事に集積して、家族皆で怒られてしまったという、内容だった。
「フム、フム一週間前か」いささか理解に苦しむも話を合わせ思い出していた。
「だからータツさんが笑わなかった時にー」電話の向こうは興奮している。
笑わないで怒られるのだろうか?一週間前と言えば私の店で何時ものメンバーが、何時ものように集まり、ゲームらしきものをしていた。
「大器晩成の早死に」・・・二人が笑った。
「私は犬です」・・・鶏の真似をして言った!また二人笑った。
「残り5人だ」その中に私は含まれている。
そうだ、このゲームは笑ったら負けなのである。成り行き上参加してしまったが、私は笑わない。何故なら勝てば飲食代が貰える。もちろん負ければ半額負担なのだ。何が有っても笑えない。酒を飲みながらゲームに陶酔している君たちに、生活費がかかっている私が負けるはずがないじゃないか。「フ、フ、フ・・・」心の中では笑っている。
ゲームの最中に電話の本人が質問した。「ねー、タツさんは何故笑わないの?」
黙っていると愛想が悪いと評判が落ちるので答えたが、飲食代の事は言えず、
「ゲームの最中は祖父ちゃんの死んだ時を思い出しているんだ」
私の一言に全員吹き出し、勝利した。・・・複雑ではあった。
そして当日である?
その日は彼の祖父の何回目かの法事であったそうだ。
お経が始まり半ばを過ぎたころ何処となく「ク、ク、ク・・・」と笑い声が聞こえる。
気がついた姉が近づく「何やってるのよあなた」彼を叱る。
「・・・ ・・・」 弟の声 「ハ、ハ、ハハハ・・・」姉が笑い始めた。
「お前たち、いい加減にしろ!」長男が見かねて怒ってきた。
「・・・ ・・・」姉の声 「ワ、ハハハ・・・」さすが長男、豪快である。
真赤な顔をして母親が来た。「どうしたの?」
「・・・ ・・・」三人で一斉に話し出した。そして、理由を聞いた母親は父親の所に理由を話した。
笑っている。
理由を聞いた父親は「それじゃーしょうがないなー」と言いながらも、式典後に兄弟全員で怒られたそうだ。
親戚には躾の問題として母親も怒られてしまった。と、いう内容である。
「所で、私は何の関係があるの?」優しく聞いてみた。
「だからー、タツさんの祖父ちゃんが死んだことを、思い出したんだってばさー、さー、さー」と、エコーが効いていた。
私は、黙って受話器を置いた・・・「祖父ちゃん、何時までも忘れられなくて良かったね」
遠い昔の出来事だった。 龍
絵・文 君島龍輝
