亡母の命日。一周忌ですのや。
ちゅうことで、朝早うから出かけて、某所でまんまんちゃんしてまいりましたのです。
「なあ、おとうちゃん。なあて。なに草葉の陰でほっこりしてんのあんた。ひとが呼んでんのに、返事しんかいな」
「え? なんやぁて」
「ほかでもあらへん。〇〇のことやがな。うちらが死んでから、ちょっともまんまんちゃんしてけつからへんねんデ、あのガキ。故人を偲ぶちゅう気持ちが、こっからさきもない」
「○○て誰や?」
「なに言うてんのとうちゃん。うちらのアホ息子やないかぁい」
「せやったっけ。なんせワシは、死んでからだいぶ経つさかい、だんだん現世のこと忘れてきてるさかいね」
「そういえばあんた、だいぶ体が透けとおってきたな。ボチボチ成仏しそうや」
「うん」
「けど、一般的傾向としてやナ、ちあんと魂を送ってもろたらやナ、四十九日過ぎたらホトケさんになるねんで。あんた死んで何年経つ思うとん。そいだけ時間かかるのも、○○が、ちょっともまんまんちゃんしくさらんからやないかぁい」
「ホンマや。おかあちゃんのハナシ聞いてたら、ちょっとずつ○○のこと思い出してきたデ。ほんで、ジンワリ怒りがこみあげてきた、ちゅやっちゃ。しゃあないガキやな、あのガキは」
「せやろ。おとうちゃんもムカつくやろ。いっぺん懲らしめたらなあかんデ。もうすぐウチの命日やけど、ほってたら、なあんもしやへんであのガキ。どや、連れもって○○ンとこ化けて出たろか」
「無茶言うなや。ワシら怨霊とちゃうデ。普通の、庶民的な霊魂やデ。現世に化けて出るほどのポテンシャルを秘めてへんがナ。よしんば、なんとか化けて出たとしてもやな、鈍感な○○のこっちゃ。ちょっとも気づきよらんぞ」
「ホンマやなあ。せや、おとうちゃん。ふたぁりしてテキの夢に出現し、へぐい(黄泉戸喫)攻撃しかけたろか。絶対ビビりよんで、あのガキ」
「そらオモロい。オモロちゃんちゃこや。さすがのテキも、ちったぁ懲りよるやろ。よしいこ」
「いこいこ」
ちゅうことで、もう怖い夢やめて。
安らかに頼んますワ。