子供が小学生になった。
子供とパートナーと喜びに満ちあふれたある日、私は何か違和感を感じる。
私の家に、もう一人子供がいるのだ。
その子を見て、私はパニックにおちいる。
私は一人目を愛しすぎて
この子を見捨てていた??
そんな強烈な思いに駆られた時。
そして、パートナーが言う。
その子は3年前に私が生んだ第二子で、
私はその直後に産後うつに陥り、
子供のことを忘れてしまった、と。
嘘だ。
私にそんなことが起こるはずがない。
私は自分に近づいてくるその子を抱き締める。
嘘だ。
私にはこの子を慈しむ気持ちが残っている。
忘れてなんかいない。
私はこの子を愛する。
瞬間、私はこの子との日々を思い出す。
けれど、そうして何日間か過ぎて、
私はその子を忘れている瞬間に気づく。
一人目とだけお風呂に入り、その子を放置しているのだ。
おかしい。
けれど少しずつ薄れていく記憶。
嫌だ、忘れたくない。
けれど、記憶は、容赦なく消えていく。
その様子をパートナーがなんともいえない顔で見つめている。
そして気づく。
あ、私は、3年間、何度もこれを繰り返した、と。
思い出し、少しずつ忘れ、完全に忘れ。
そして、思い出し、また忘れ。
いやだ。
忘れたくない。
そう思いながら、私からその子の記憶は消えた。
一人目の子が2年生になる。
そしてまた思い出した。
ああ、私は二人目を生んで狂ってしまった。
忘れたくない。
忘れたくない。
忘れたくない。
そう思いながら、記憶が消える朝が来る。
そして、また、その子を思い出す瞬間に。
どうしようもない罪悪感と、自分に対する怒りと
どうしようもなく、叫ぶ。
それを、哀しそうな、憐れむような顔でパートナーが見つめている。
彼は私を助けることは出来ないのだろう。
見つめることしかできない彼の顔が、
目に焼き付いたまま
目が覚めた。