行ける所まで行ってしまう、『バリー・シール/アメリカをはめた男』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『バリー・シール/アメリカをはめた男

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ダグ・リーマン

【主演】トム・クルーズ

【製作年】2017年

 

 

【あらすじ】

 1970年代後半、CIAに腕を買われ秘密任務を請け負ったパイロットのバリーは、中南米の空を飛び回る。やがてコロンビアの麻薬組織もバリーの腕に目を付け、バリーはCIAと麻薬組織の仕事を掛け持ちすることになる。

 

 

【感想】

 時代の大きな波に飛び込み、その波を機転と思い切りの良さで乗りこなそうとしたパイロットの話し。実話をベースにしているらしいが、脚色はそれなりに施されているようだった。それでも、こんな人生を送った人間がいたのかと思うと、ただただ驚くしかない。主人公は、元民間航空のパイロット。ちょっとした冒険心からCIAの仕事を手伝い、やがては麻薬組織の運び屋として活動する羽目になる。

 

 

 重い雰囲気の政治サスペンスとして描くことも可能だったと思うが、この映画は徹底して明るくノリがいい。1970年代の後半から80年代の中頃まで、アメリカを取り巻く政治や経済の流れに乗っていく。CIAは中米の共産ゲリラの秘密基地の写真を欲しがり、麻薬組織はアメリカへコカインを運び込もうと画策する。そこに主人公のバリー・シールが登場し、無謀で大胆な操縦技術を駆使して、両者の望みを叶えていく。

 

 

 そして主人公をニヤケ顔のトム・クルーズが演じ、気持ちいいくらいにはまっていた。絶体絶命のピンチに何度も陥るが、勢いだけで何とか凌いでいく。明け透けで大胆でバカバカしい作戦が、いかにも陽気なアメリカといった雰囲気で、観る者を楽しませてくれる。ストーリーのテンポの速さや、テンポの良さが嬉しかった。そして聞いたことのあるイラン・コントラ事件の概要を、分かりやすく解説してくれていた。

 

 

 ただ大きな波に最後まで乗り続けることは、誰にもできないのかもしれない。乗りこなしているつもりでも、いつかは波から放り出されてしまうよう。明るい調子の栄枯盛衰の物語でもあった。ツケの払い方や、始末の付け方を見ているとジンワリと切なさが漂ってきた。冒険する人間の失敗は、一見愚かしいように思えるが、次第に愛おしさや切なさが募ってくる。