悪に染まらず、『ベイビー・ドライバー』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ベイビー・ドライバー

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】エドガー・ライト

【主演】アンゼル・エルゴート

【製作年】2017年

 

 

【あらすじ】

 天才的な運転技術を持ち、犯罪組織の“逃がし屋”を務めるベイビーは、足を洗うための最後の仕事を請け負う。晴れて堅気の生活に戻れるはずだったが、ベイビーは思わぬ事態に巻き込まれていく。

 

 

【感想】

 一発目のカーチェイスで痺れてしまった。主人公が運転する車は、真っ赤なインプレッサ。車が躍るように動き回り、まるで氷の上を滑っていくようだった。カーチェイスをウリにする映画は数多くあるが、この映画のクールで洒落たカーチェイスは圧巻の一言。車のダンスを見ているようだった。映画は、この華麗なカーアクションと銃撃戦でグイグイと押していく。軽妙で洒落たアクション・シーンは、今っぽさが前面に出ていた。

 

 

更に、登場人物のキャラクターも立ちまくりで、癖のある悪い大人たちが目白押し。この周囲の汚らしく独善的な面々が、主人公ベイビーの未熟さや純粋さを、より貴重なものとして映し出す。そして映画は、派手な撃ち合いを続けながら男性客好みの展開をみせるが、次第に主人公の成長物語に重心が移っていく、気が付けば青春モノのど真ん中を突き進んでいた。

 

 

 犯罪者の“逃がし屋”とい設定は、ジェイソン・ステイサム主演の「トランスポーター」と同じだが、受ける印象は大きく違う。この映画には初々しさや未熟さを礼賛し、ひ弱さを擁護しているようだった。もちろん毒の要素もあり、ふとタランティーノの名前が頭に浮かぶ。似た雰囲気映画だと、「トゥルー・ロマンス」なのかもしれない。また「ラ・ラ・ランド」を意識した訳ではないのだろうが、ワンカット映像も可愛くまとまっていた。遊び心が広がっていく。