ヒーローは長生き厳禁、『ローガン』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ローガン

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ジェームズ・マンゴールド

【主演】ヒュー・ジャックマン

【製作年】2017年

 

 

【あらすじ】

 かつては“X-MEN”として活躍したローガンだが、超人的な能力は衰え、驚異的だった治癒力も失いつつあった。ローガンは“X-MEN”を率いていたチャールズを匿いながらひっそりと暮らしていたが、そこにミュータントの少女が現れ、彼女を無事に逃がすため北へ向かうことになる。

 

 

【感想】

 今までの「X-MEN」シリーズとは趣をガラリと変えている。SF映画としてのスケール感や、ケバケバしさはほとんどない。潜水艦が宙に浮くこともなければ、時空を捻じ曲げて移動することもない。映画のテイストは西部劇に近く、悪党を倒し続けた凄腕ガンマンの晩年を描いている感じ。主人公のウルヴァリンことローガンは、超人的な能力を失いつつあり、酒に溺れる日々を送り人間のチンピラ相手にも苦戦する始末。

 

 

 ローガンの他にも、「X-MEN」の創始者プロフェッサーXことチャールズも登場するが、こちらも老いには勝てず薬が手放せなくなっている。しかも頑固で気難しくなり、介護するローガンが大いに手を焼く。強者どもの夢の跡なら高尚な雰囲気をまとうことも出来るが、ローガンとチャールズから漂ってくるのは、強者どもの成れの果て。生きることの厳しさと、難しさをまざまざと見せつけられた。

 

 

 そして荒んだ男たちに潤いを与えるのが、女の子のミュータント。愚痴と溜息しか出てこない男たちを叱咤するように、自由に伸び伸びと動き回る。演じている子役も、将来を約束されたようなハイレベルの演技を披露していた。老いた二人を背景に、生命力や希望といったものをありありと見せつける。この対比が映画の肝だったのかも。枯れ木と新緑を同時に眺めているようだった。