そろそろカンヌを捨ててもいいのかも、『光』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】河瀬直美

【主演】水崎綾女

【製作年】2017年

 

 

【あらすじ】

 目の不自由な人のため、音声ガイドの製作に携わっている美佐子は、モニターの上映会で弱視の元カメラマン雅哉から厳しい指摘を受け傷つく。しかし雅哉の写真集を見たことで、雅哉に対して強い関心を持つようになる。

 

 

【感想】

 河瀬直美の前作「あん」は、とてもいい映画だった。樹木希林の存在感が大きかったこともあるが、頑なな永瀬正敏の心の変化を丹念に辿っているようで、ラストで心地のいい開放感を味わうことができた。そして出世作である「萌の朱雀」も好きな映画で、風を受け山の木々がゆったりと動くシーンを覚えている。日本の原風景を見ているようで、心が揺さぶられるようだった。

 

 

 そして今回の映画でも、監督のらしさは出ていたと思う。主演のツートップ、水崎綾女と永瀬正敏の演技力は手堅く間違いがない。アップを多用した映像は、リアルな心情を映し出しているようだった。また演技経験の無さそうな出演者を自在に操り、ありふれていそうなリアルな世界を見せていた。映画を鑑賞しているというよりも、日常の風景を眺めている感覚。そして初めて知った音声ガイドの仕事の奥深さも見せてもいた。

 

 

 ただ、映画からは力みが伝わってくる。カンヌ映画祭への出品を目指したこともあるのかもしれないが、全編から「いい映画でしょ」といった言葉が漂ってくる。確かにいい映画だったとは思うが、それを強調されると興醒めになる。いかにもといったセリフの連続は、映画をギクシャクとさせていた。煩悩を打ち払うことは、本当に難しいことだと思う。