習慣は手強い、『ちょっと今から仕事やめてくる』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ちょっと今から仕事やめてくる

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】成島出

【主演】工藤阿須加

【製作年】2017年

 

 

【あらすじ】

 入社一年目の青山は、営業成績が上がらず上司から厳しい叱責を受ける毎日だった。精神的に追い詰められた青山は、駅のホームで到着する電車の方へ体が傾いていく。その時、青山の体を引き戻したのは幼馴染みを名乗る山本だった。

 

 

【感想】

 タイムリーな話題を扱った映画。ブラック企業やパワハラ、過労自殺といったものが出てくる。主人公は就職活動に苦戦し、ようやく内定をもらった企業に勤める営業マン。営業成績が上がらず、上司から罵声を浴びせられ次第に虚ろになっていく。その姿はコーナーに追い詰められ、打たれまくるボクサーのよう。必死にガードだけを固めて、ひたすらにゴングが鳴るまで耐え忍ぶ。

 

 

 ブラック企業やパワハラの現状をよく調べていて、主人公を罵る上司の言葉や、身も心もボロボロになっていく主人公の心情や行動にリアルさがあった。高度成長期には猛烈社員や営業の鬼、といった言葉が誇らしげに使われていた気もする。その後、バブル時代にはエコノミックアニマルや企業戦士、といった言葉が自嘲気味に使われるようになり、そして今、鬼は悪魔となり果て、戦士は傍迷惑な存在となってしまったのかも。

 

 

 映画は、オーソドックスな展開を見せる。常識的といってもよさそう。無理をせず、頑張り過ぎないで、と言っているようにも感じられた。激しい展開やブラックな笑いなど、普通を逸脱する話しを期待すると少し物足りなさが残るのかも。それでも、ハッピーエンド以外の結末はあまり見たくはない。そしてブラック企業の息の根を止めるには、ホワイト企業の好決算が何よりだと思う。頑張れホワイト企業。ただ不景気になると、ブラック企業は俄然息を吹き返しそうで怖い。