親は欠点だらけの神様なのかも、『はじまりへの旅』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『はじまりへの旅

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】マット・ロス

【主演】ヴィゴ・モーテンセン

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 ベンは現代社会を嫌悪し、子供たち6人と共に森の中で暮らしていた。子供たちは学校に通っていなかったが、高い教養とアスリート並みの身体能力を身に付けていた。そんな一家に母親の死が知らされ、彼らは葬儀に参加するため森を離れて旅に出る。

 

 

【感想】

 きっと1970年代には、こういったタイプの人たちが溢れていたのかもしれない。この映画の主人公一家はヒッピーの末裔といった感じで、社会との接点を極力抑え、森の中で自給自足の生活を送っている。物質文明を嫌悪し、宗教を否定する。ただし、仏教は哲学として受け入れる。銃やナイフに親しみ、狩りに重きを置く。案外、こういうスタイルの生活を肯定するアメリカ人は、多いような気もする。

 

 

 ただこの映画には、朗らかなムードがベースにあった。声高に正論を繰り返すだけではなく、随所に笑いを用意している。あれこれと議論が始まりそうな内容にも関わらず、優し気でポジティブな明るさが灯り続けていた。森で育った子供たちが現代の社会に遭遇することで、次々とハプニングが生じる。もちろん、現代社会に立ちする批判や皮肉がタップリと盛り込まれていた。

 

 

 そして親の存在感の強さを、感じさせる映画でもあった。親の理想に、子供は引きずられるしかないのか。子供を育てることの難しさを見せつける内容。結果が良ければ、育て方がよかったということになってしまうのか。未来が過去を決定するようにも思えてくる。主人公の父親に共感できるか、反感を覚えるか。信念が危険ならば、世間に流されるのも危険だったりする。正解の見えない世界は、苦しくもあり楽しくもあるのかも。