間違いのない力作、『ムーンライト』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ムーンライト

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】バリー・ジェンキンズ

【主演】トレヴァンテ・ローズ

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 マイアミで暮らす小学生のシャロンは、内気な性格のため同級生からイジメを受けていた。母親との二人暮らしだったが、母親は次第に薬物に溺れていく。そんなシャロンを気に掛けてくれたのは、キューバ出身の麻薬ディーラーと同級生のケヴィンだった。

 

 

【感想】

 黒人の置かれた過酷な現状を訴えた内容の映画。貧困に追いやられ、社会的にも経済的にも苦しい立場は今も昔も変わらない。逆にヒスパニック系の存在感が増したことで、黒人の負のスパイラル感は増しているのかもしれない。警察との確執、現状から抜け出せない苛立ち、不満は募るばかり。そして去年のアカデミー賞でのゴタゴタ。鬱々としたエネルギーはどこへ向かうのか。

 

 

 この「ムーンライト」は、アカデミー賞の作品賞を獲得した映画。主人公の黒人はゲイであり、母親は薬物依存症。小学校から高校までイジメを受け、薬物と暴力の溢れる危険な地区で暮らす。負の要素をいくつも持った主人公の成長物語で、3人の俳優が一人の主人公を演じている。真摯で真面目な内容の映画。観客の多くが良い映画だ、と感想を述べそう。

 

 

 ただアカデミー賞の作品賞としてどうかと言われれば、「ラ・ラ・ランド」を推したくなる。この「ムーンライト」が切実で社会性のある映画なのは間違いないが、ここまで実直に作られると少し息苦しくなる。辛気臭い現実をまざまざと見せつけられても、憂さはますます溜まるばかり。やはり浮世を生き抜くには、歌って踊る華やかさは貴重。案外、軽さの奥に重さがあるのかも。