【タイトル】『3月のライオン』
【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)
【監督】大友啓史
【主演】神木隆之介
【製作年】2017年
【あらすじ】
幼い頃に交通事故で家族を亡くした桐山零は、父親の友人だったプロ棋士の幸田に育てられる。将棋に全てを賭けた零は中学生でプロとなり、現在は高校に通いながら棋士として戦い続けていた。孤独な生活を送る零だったが、近所で暮らす三姉妹との交流で生きる喜びを感じるようになる。
【感想】
将棋が好きな人には、ダイレクトに熱が伝わってくる映画だと思う。勝ち負けがはっきりとするプロ棋士の世界、そのシンプルさが輝いて見える。体一つで勝負する姿が格好良く、そして美しい。ちょっと憧れの世界でもある。もちろん将棋に詳しくなくても楽しめる内容になっていた。将棋を触媒にして、そこで生きる人間の姿を瑞々しく見せていた。勝ちにこだわるあまり、無残で無様な姿を晒していく。
主演の神木隆之介がいいナビゲーターとして、登場人物たちのキャラクターを端的に紹介していた。様々なキャラクターが登場し、短い登場シーンにも関わらず人間味をリアルに響かせていた。きれいごとだけではなく、切羽詰まった人間が示す醜さが、やるせなさと共に襲い掛かってくる。才能のある人間が集まった将棋界なのに、その中ではっきりとした優劣が生まれてしまう。負けたくない気持ちは、様々な形で表れる。
そして主演の神木隆之介だけではなく、出演している俳優陣が渾身の演技を披露していた。俳優も勝負をしている感じで、随所で深い印象を残す演技を見せていた。特に佐々木蔵之介の演技は秀逸。様々な思いが表情に浮かんでいた。佐々木蔵之介の見せる苦渋の表情が胸に迫ってきた。あそこまで苦さを出せる役者は、なかなかいない。今年の助演男優賞に是非ノミネートしてもらいたい。