信念や宗教を持てば楽になるのだろうけど、『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ギャビン・フット

【主演】ヘレン・ミレン

【製作年】2015年

 

 

【あらすじ】

 イギリス軍大佐のキャサリンは、ナイロビで指名手配中のテロリスト2名を捕捉する。この作戦はイギリス軍が主導し、アメリカ軍から無人偵察機の支援を受けていた。キャサリンはテロリストのアジトをミサイルで攻撃することを主張するが、政府高官は許可すべきかどうかで混乱。その間にアジトの傍で少女がパンを売り始める。

 

 

【感想】

 無人偵察機が主役になりつつある現代の戦争。タイムリーな戦争批判のドラマかなと思っていた。悪くいえば、よくあるタイプの生真面目な映画をイメージしていた。映画の舞台は、大きく4つに分かれている。テロリストを追い続けるイギリス人将校のいる作戦本部、そして作戦実行の可否を判断する政府高官のいる会議室。更に、無人機を操作するラスベガスのアメリカ空軍基地と、ナイロビのテロリストのアジト。この関係者の間でジリジリとした戦いが始まる。

 

 

 単純な戦争批判の映画を予想していたのに、気が付けば緊迫感が怒涛のように押し寄せ、手に汗握る秀逸なサスペンス映画に飲み込まれていた。アジトには凶悪なテロリスト2名と、自爆テロを実行しようとする若者が2人。アジトの傍らで親の仕事を手伝う可愛い女の子がパンを売る。ここに激しい葛藤が生まれ、その様子を無人機や最新の小型カメラがライブ中継で、戦場から遠く離れた関係者に伝える。

 

 

 小さなエピソードの入れ方も上手く、関係者の焦りや戸惑い怒りがダイレクトに伝わってくる。現代の戦争はいくつもの会議室で実行される。そしてさり気なく、少女へのシンパシーも盛り上げていく。アメリカ軍主導ならミサイル発射を即決しそうだが、日本人にどこか似たイギリス人は決断できずに、上へ上へとお伺いを立てる。誰も責任を取りたくない、という気持ちがありあり。

 

 

 提示される選択肢は2つ。ミサイルを発射するか、それとも見送るか。その結果は少女の死か、自爆テロによるより多くの被害へと繋がる。関係者がそれぞれの立場で発言するが、何も決められずに右往左往し時間が切迫する。この焦燥感が息苦しく、映画を眺めているだけのはずなのに、どうすべきか厳しく問われているような気持ちにさせられる。見てみないフリか、先送りか。判断自体も無人機や人工知能に任せたくなる。