ハチャメチャが許容されて、『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス空白の5年間』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス空白の5年間

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督・主演】ドン・チードル

【製作年】2015年

 

 

【あらすじ】

 1970年代後半、ジャズ・トランペット奏者のマイルス・デイヴィスは、表舞台から遠ざかり自宅に引きこもっていた。そして、マイルスの復帰レポートをものにしたいと考えていた音楽記者のデイヴは、大胆にもマイルスの自宅を訪れインタビューを申し出る。

 

 

【感想】

 どの時代でも、どんなシーンでも映画になってしまいそうなマイルス・デイヴィス。波乱に満ち、才能が集い、映画監督ならどこをどう取り上げるのか迷いそう。そしてこの映画を監督主演で引っ張るドン・チードルが選んだのが、自宅に逼塞したマイルス・デイヴィスだった。病状が悪化しドラッグに溺れ、荒んだ生活を送るマイルスの前に、ユアン・マクレガー演じる音楽記者が現れたことで、騒動と復帰への道筋が見えてくる。

 

 

 映画からマイルス・デイヴィスの苦悩が滲んでくるが、決して暗いトーンになることはなかった。感情を爆発させ、人を殴り、銃をぶっ放すマイルスだったが、常に人間味と大物感を漂わせる。傲慢なマイルスを演じていても、ドン・チードルの持つ優しさが滲み出ていた。騒動に巻き込まれるユアン・マクレガーの姿もコミカルで、温かみのあるヒューマン・ドラマになっていた。

 

 

 演奏シーンもそれなりに挿入され、音楽を聴ける映画でもある。トランペットの音色は心地よく、ジックリと聴いていたい気持ちにさせられた。ラストシーンも格好良く、老いてなお一線に立ち続け挑戦を止めない姿を見せている。本物のマイルス・デイヴィスを知っている世代がどう感じるの、ちょっと気になった。ジャズの黄金時代を体感してみたかった。音楽はどんどん姿を変えていく。