カニは妥協の産物かも、『レッドタートル ある島の物語』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『レッドタートル ある島の物語』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 一人の男が遭難し、無人島に流れ着く。男は筏を作り島からの脱出を図るが、その試みはことごとく失敗。そしてある日、一匹の大きな赤い亀が浜に上がってくるのを見た男は、思わぬ行動に出る。

 

 

【感想】

 一人の男が流れ着いた無人島で暮らす、というアニメ映画。エンターテイメント色は薄く、芸術性や哲学性といったものを重んじていそう。話題になったのは、この作品の制作にジブリが関わっていたこと。オランダ出資の外国人監督と、ジブリのコラボには興味が湧いてくる。予告編を観ても映画の内容が分からなかったので、予想外の面白さを体感できるかもという期待もあった。

 

 

 オープニングは、主人公の男が海で遭難し波にもまれるというシーン。波というよりも、大きな山が次々と襲い掛かってくる映像だった。それなりの迫力はあるものの、今まで見知ったジブリの映画ではなかった。ジブリ作品にある柔らかさや滑らかさは影を潜め、武骨な力強さが前に出ている。この映画には、ジブリからイメージしたくなる水彩画や平仮名といったものはなく、版画や漢字をイメージさせる何かがあった。

 

 

 そんな気分でこの映画を観ていると、中国風のアニメを観ている気がしてきた。竹林から連想したのかもしれないが、漢詩が掲げられても違和感はなかったと思う。ストーリーも中国の故事のようだったし。余計なものや余分なものを捨て去り、本筋を一直線に進むような切れ味があった。今までのジブリ映画を期待していく、物足りなさを感じてしまうかも。最短距離を突き進みながらも、上映時間の80分が意外と長く思えた。