人間は迷うし間違える、『ハドソン川の奇跡』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ハドソン川の奇跡』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】クリント・イーストウッド

【主演】トム・ハンクス

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 2009年1月15日、サレンバーガー機長の操縦する旅客機が、離陸直後に鳥の群れと衝突しエンジントラブルに見舞われる。すぐさま空港に引き返そうとするが、出力が低下し空港にはたどり着けないと判断した機長は、ハドソン川への着水を決断する。

 

 

【感想】

 “ハドソン川の奇跡”は覚えている。機長のとっさの判断で、乗員乗客全員の命を救った、というニュースだった。その後、機長は英雄に祭り上げられ、大変な思いをしたのかなと勝手に思い込んでいが、まさか映画になるとは思いもしなかった。しかも監督はクリント・イーストウッド。なぜ映画にしたのかと、疑問符が募るばかり。観客は結末を知っているし、離陸から着水までの時間もあっという間。どう頑張っても、一本の映画に引き伸ばせそうもない。

 

 

 しかし映画では、多くの日本人が知りえなかった展開が用意されている。英雄とされていた機長の名誉が、危うく失墜しかねない事態が進行していた。そのせいで映画の大半、主演のトム・ハンクスの表情は冴えない。それもそのはず、ギリギリの決断を下し乗客の命を救ったと思っていたのに、それに異を唱える人が現れる。パイロットもなかなかキツイ仕事だ。

 

 

 単調になりそうな内容を、厚みのあるヒューマンドラマに仕上げていたのは、やはりクリント・イーストウッドの功績だと思う。丁寧な心理描写を重ね、時間軸をバラバラにする編集の上手さも光っていた。どんな物語でも、クリント・イーストウッドの手に掛かれば、気品のある良質な映画に変わってしまうのかも。今回もまた、名人芸を見せてもらったような気がする。