【タイトル】『ティエリー・トグルドーの憂鬱』
【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)
【監督】ステファヌ・ブリゼ
【主演】ヴァンサン・ランドン
【製作年】2015年
【あらすじ】
長年働いていた会社を解雇されたティエリーは、就職支援プログラムを受けるなどして再就職を目指すが、何の結果も得られなかった。家には障害を持った息子がいて、どうしても働く必要があった。そしてようやく見つけた仕事は、スーパーでの警備員。必死に仕事を覚えるティエリーだったが、彼の憂鬱はどんどん募っていく。
【感想】
邦題にある通り、憂鬱な気分にさせられる映画。もちろん映画が退屈でウンザリするのではなく、映画が上手く撮られているので、鬱々とした気持ちを味わうことになる。主人公は会社を解雇された中年男。生真面目で頑固、愛想が悪くとっつき難そうな風貌と性格。日本と同様なのか、フランスでも中年男の再就職はかなり難しいよう。映画はフィクションだが、ドキュメンタリー以上にリアルを感じさせてくれる。
ストーリーは分かり易い構成で、主人公ティエリーの苦境を示すシーンが順々に現れる。ハローワークらしき場所でのやりとり、金融機関での面談、不動産売買の現場、面接と模擬面接、そして警備員としての仕事。カメラはティエリーの表情を追っていく。その表情からは、苦悩や苦痛が滲み出る。運の悪い男、自己責任、といった言葉ではなかなか片付けられない。
人によっては、観ているうちに落ち込んでくるので、注意が必要なのかも。普段から苦しみの中にいる人は、わざわざ観なくてもよさそう。娯楽性を重視した映画なら、主人公がどこかで反攻に転じるが、そういったシーンも見られない。ひたすらに、弱い者同士の戦いを見ているようでもあった。比喩的にも実際的にも、他人を殺すか、自殺するかを迫られているのかも。世界はキツイ場所でもある。