まさかは至る所に、『イレブン・ミニッツ』 | 平平凡凡映画評

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映画を観ての感想です。

【タイトル】『イレブン・ミニッツ

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】イェジー・スコリモフスキー

【主演】リチャード・ドーマ

【製作年】2015年

 

 

【あらすじ】

 午後5時、一人の女優が監督の待つホテルの一室にいた。監督は冷静さを取り繕うが、明らかに彼女の体が目当てだった。その頃、嫉妬深い女優の夫は、打ち合わせが行われているというホテルの一室に急いで向かっていた。またホテルの周辺には、さまざまな男女が集まりつつあった。

 

 

【感想】

 思いもしない事態が発生する直前の、11分間にスポットを当てた群像劇。何人もの登場人物が出てくるが、詳しい背景は説明されない。思わぬことが起きる午後5時11分に向かって、冷静に、あるいは慌てふためき進んでいく。映画のトーンはどこか軽やかでユーモラスだが、それ相応の毒や冷ややかな視線も感じさせてくれる。

 

 

 つい比べたくなるのが、去年公開されたアルゼンチン映画「人生スイッチ」。「人生スイッチ」は短編作品を集めたオムニバスだったのに対して、この「イレブン・ミニッツ」はそれぞれの物語が同時進行し、ラストで1つにまとまっていく。多くの食材を同時に調理しながら、最後で一皿にまとめるような格好良さがある。また、ちょっと珍しいポーランド映画でもあった。

 

 

 おそらく脚本段階では、痺れるくらいに魅力的な作品に思えたはず。まさかの衝撃や運命を、目に見える形で映し出してくれそう。成功すれば大絶賛となるが、反面、難易度は相当に高い。こういうストーリーを、テンポよく撮れる監督はそうそういないし、運に恵まれる必要もある。そしてこの映画にはそれなりの面白さはあったものの、途中、ウトウトしてしまう瞬間もあった。複数の物語をリズムよく動かし続けるのは、至難の業なんだと思う。