躍っているのか躍らせれているのか、『疑惑のチャンピオン』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『疑惑のチャンピオン

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】スティーヴン・フリアーズ

【主演】ベン・フォスター

【製作年】2015年

 


【あらすじ】

 自転車のロードレースで活躍していたランス・アームストロングは、25歳のときにガンを発症し生命そのものの危機を迎える。過酷な抗がん剤治療や手術を経て、ランスは奇跡的にガンを克服しロードレースにカムバック。そしてランスは二度と惨めな思いはしたくないと、積極的に、また組織的にドーピングを行い、ロードレース界の頂点を目指す。

 


【感想】

 自転車のロードレースに詳しくなくても、ランス・アームストロングの名前はしっかりと記憶していた。ツール・ド・フランスを7連覇し、驚異の山登りを見せつけたりした。前にロードレースのドキュメンタリー映画を観たことがあるが、団体戦としての自転車レースは結構面白い。チームのエースを勝たせるために他の選手がサポートにまわるものの、人間のやることなので、命令無視や駆け引きなど個人的な戦いが生まれたりする。なかなか泥臭い世界に見えた。

 


 ランス・アームストロングはツール・ド・フランスを7連覇し、頂点を極めた選手。ただしドーピングの噂が絶えず、2013年にドーピングの事実を認めている。しかしロードレースの界ではドーピングが蔓延し、ランス・アームストロングだけが悪者ではないらしい。そして映画を観ていて疑問だったのは、なぜ検査でドーピングが見つからなかったのかということ。映画では語られなかった何らかの方法が存在したのかも。ちょっと気になる。

 


 ストーリーは、ガンを克服後ドーピングにまみれていくランス・アームストロングの姿を淡々と追っていく。迫力あるレースシーンや選手同士の確執など、ドラマチックな展開を期待していたが、この映画はあくまでもドキュメンタリー風のスタイルで貫かれ、観客の気持ちを煽るシーンはほとんどなかった。ランス・アームストロングの人物像も、悪者でなく善人でなく、ごくごく普通の人間として描かれていた。

 


 この映画を観ながら、つい比べたくなったのが最近観たばかりの「日本で一番悪い奴ら」。「日本で一番悪い奴ら」の主人公の刑事は、拳銃押収という職務を果たすためヤクザに近付き覚せい剤を扱うようになる。一方、ランス・アームストロングはヒーローでいるため、ドーピングに依存していく。動機はそれぞれ違うものの、どこか哀れを誘う。周囲の期待に応え続けるのは簡単ではない。