【タイトル】『ヘイトフル・エイト』
【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)
【監督】クエンティン・タランティーノ
【主演】サミュエル・L・ジャクソン
【製作年】2015年
【あらすじ】
南北戦争後のワイオミング州、賞金稼ぎのジョン・ルースは、指名手配犯の女を手錠につなぎ駅馬車に乗っていた。その途中、雪で立ち往生していた同じく賞金稼ぎの黒人と、新任保安官を同乗させるが、猛吹雪のためルースたちは一軒の店で一夜を明かすことにした。だがその店には、謎めいた4人の先客がいた。
【感想】
タランティーノ節が全開の映画。勧善懲悪のハッピーエンドや、品行方正な倫理感などクソくらえ、といった趣き。滑稽で醜悪な悪党たちが、密室で騙し合いを繰り広げる。誰が勝ち残るのかさっぱり分からない。思いもしない方向から銃弾が飛び交い、一発ごとに状況が変わっていく。グロテスクで陽気な西部劇だった。
主な舞台となるのは一軒の店。雪で閉ざされた室内に、8人の男と1人の女がいる。職業は賞金稼ぎに駅馬車の御者、お尋ね者に新任保安官、死刑執行人に元南軍の将軍などなど。ただ誰もが怪しく、悪党の揃い踏みといった感が強い。同じく西部劇だった「ジャンゴ」が前へ進む開いた話しだったのに対し、この映画は閉じていて内部崩壊を予感させる。
前半は、意味不明でどこに繋がる話しなのかまるで掴めず、調子のいい会話が空回り気味に続いたりする。つい眠気を覚えたりもしたが、中盤以降の傍若無人の展開はやはり爽快。タランティーノが圧倒的なリーダーシップを発揮し、観客をグイグイと引っ張っているようだった。後半は、ただただ黙って従うしかない。この強引さが癖になる。