ドキュメンタリー以上にリアル、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『マネー・ショート 華麗なる大逆転

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】アダム・マッケイ

【主演】クリスチャン・ベイル

【製作年】2016年


【あらすじ】

 ヘビメタを愛する風変わりな金融トレーダーのマイケルは、住宅ローンを組み入れた金融商品がクズ同然で、近い将来暴落することに気が付いた。マイケルは大手投資銀行を回り、商品が暴落した際に大儲けできるスワップ取引を次々と結ぶ。ウォール街の金融マンはマイケルを嘲笑したが、マイケルの指摘に同調する銀行家や投資家も現れる。


【感想】

 リーマンショックを題材にした映画が、ポツポツと公開されている。リーマンショックが起きたのは2008年9月。それなりの期間を経て、落ち着いて当時の状況を振り返ることが出来るようになったのだろう。多くの人が大損を喫したはずの株価大暴落だが、当然のことながら、この暴落局面で大儲けした人もいる。


 この映画の主人公たちは、アメリカの住宅ローンの異常な加熱と不健全さを察知し、金融市場が暴落する方に大金を賭ける。観客は主人公たちが勝利するのを知っているので、ある意味、安心して主人公たちの挑戦を眺めていられる。正しい者たちが報われるといった感覚で観ることもできるし、傲慢なウォール街の住人の無様さを嗤うこともできる。


 ただ市場の歪みを見抜き暴落を予想しても、それがいつ起きるかは誰にも分からないようだ。主人公たちの勝利は、たまたまだったような気もしてくる。大地震や火山の大噴火を予想するのと同じなのかも。いつかは起こるが、いつを特定するのは至難の業。もちろん宝くじと同じように、誰かが当てるのだろう。


 この映画の主人公たちは勝ちを収めるが、映画の大部分はジリジリと追い詰められる苦境が中心。市場の暴落を予想しても、資金を投入し続けるのは容易ではない。結果的には2年以上の我慢を強いられたことになる。必要なのは、市場は暴落すると信じる強靭な精神力。もしかすると狂人でないといけないのかも。