「ブルージャスミン」を推したくなる、『キャロル』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『キャロル

【評価】☆☆(☆5つが最高)

【監督】トッド・ヘインズ

【主演】ケイト・ブランシェット

【製作年】2015年


【あらすじ】

 1952年ニューヨーク、デパートで働くテレーズは、娘のクリスマスプレゼントを買いに来たキャロルと出会い強く惹かれる。テレーズがキャロルの忘れた手袋を届けたことで二人の交流が始まり、やがてキャロルもテレーズの若さと美しさに惹かれていく。


【感想】

 予告編を観ているだけで、いい映画に違いないという思いが湧いてきた。1950年代のニューヨークを朧げに映し出し、儚さと切なさをタップリと織り込んでいるように見えた。そしてアカデミー賞にもノミネートされ、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラの名前がかなり好意的に取り上げられてもいた。


 ただ期待が大き過ぎたのか、本編で心を動かされることはあまりなかった。名作映画の雰囲気や佇まいはあっても、どこか面白みに欠けていた気がした。ケイト・ブランシェットの鬼気迫る演技にしても、「ブルージャスミン」の方が滑稽で虚ろで切なさを湛えていた。この映画では、ルーニー・マーラと共にお手本になりそうな演技を披露していたが、お手本は案外退屈だったりもする。


 いい映画を作ろうとするのは当然のことだと思うが、いい映画を作っていると信じ込むのは危険な兆候なのかも。定跡の一手を重ねても名作にはならず、反対に躍動感や斬新さを失う可能性が生まれてきそう。適度な自己陶酔は必要だろうが、過度な自己陶酔は見ていて辛くなる。映画を観てウットリとはしたいが、ウットリとした映画はあまり観たくはない。