演目と役柄を誰も知らない、『殺されたミンジュ』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『殺されたミンジュ

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】キム・ギドク

【主演】マ・ドンソク

【製作年】2014年


【あらすじ】

 女子高生のミンジュが路地裏で男たちに殺される。1年後、事件に関わった一人の男が謎の集団に拉致され、拷問を受け罪を告白させられた。謎の集団はその後も事件に関わった人間を一人、また一人とさらっていく。


【感想】

 軽く韓国版の「必殺・仕事人」くらいに考えていたが、キム・ギドクがそんな分かりやすい映画を撮るわけもなかった。映画は後半、思いもしない方向に転がっていく。生半可な捻くれ方じゃない。ラストでは、頭の中が沸騰し痺れたような感覚になる。さすがキム・ギドク。あらゆる方向の、見えない敵にケンカを売っている。玉砕覚悟の独り相撲といった感じ。


 前半はかなり淡泊というか、素っ気ない撮り方をしていた。下世話なシーンが繰り返され、傲慢な人間、虐げられる人間が登場してくる。ストーリーは、女子高生が殺され、犯行グループに報復する謎の集団が現れるというもの。社会の悪を懲らしめる勧善懲悪のストーリーや、格差社会の現実を訴える内容をイメージしたくなるが、中盤以降雲行きが怪しくなる。


 サスペンスドラマとしても観ていられるが、次第に善と悪が入り乱れ、悲劇か喜劇か分からなくなる。更に、同じ役者が平然と違う役で顔を出す。格差社会の上層部がクソなら、下の方も似たり寄ったり。話しがどこに行き着くのか見えなくなる。後半は会話劇が加速し、シェイクスピア劇のようだった。ただ、スッキリとはさせない。社会の秩序に物申し、人間社会の不条理にも物申す。そして最後に残っていたのは、キム・ギドクらしさだった。