死線を越えないと変われないのかな、『白鯨との闘い』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『白鯨との闘い

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ロン・ハワード

【主演】クリス・ヘムズワース

【製作年】2015年


【あらすじ】

 小説家のメルヴィルは新作を書くため、ある男のもとを訪れる。男は30年前に遭難した捕鯨船“エセックス号”の乗組員で、最後の生存者だった。メルヴィルはエセックス号の遭難事故を題材にした小説を書こうとしていたが、男は事故について頑なな態度を取り、何も語ろうとはしなかった。しかし男の妻の一言で、ようやく男は重い口を開き始める。


【感想】

 てっきり“白鯨”の映画化だと思っていた。しかし実際は小説家のメルヴィルが、“白鯨”のモデルとなった捕鯨船の事故を生存者から聞き取るというスタイルの映画。船を襲う巨大なクジラも登場するが、メインは海洋サバイバルといったところ。前半は、未熟で傲慢な船長と腕の立つ一等航海士の確執を描き、閉ざされた船内から男臭いドラマが立ち上っていた。


 後半は、太平洋を漂流する船員たちのサバイバル劇。絶望感の漂う状況を、いくつものエピソードを重ねながら見せていた。アメリカではあまり評判が良くなかったようだが、なかなか骨のある内容になっていたと思う。もしかするとクジラを銛で突き、血まみれにさせるという描写が毛嫌いされたのかもしれない。

 確かにストーリーの流れはスムーズではなく、ぶつ切れの感じがしなくもなかった。それでも演技に迫力があり、それぞれのシーンに見応えはあった。演劇のワークショップを覗き見しているような感じで楽しめる。映画というよりかは、スクリーンで舞台劇を鑑賞した気分。キャスティングも上手く旬を突いていたと思う。