クセになる美しさ、『クリムゾン・ピーク』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『クリムゾン・ピーク

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ギレルモ・デル・トロ

【主演】ミア・ワシコウスカ

【製作年】2015年


【あらすじ】

 20世紀初頭ニューヨーク、作家志望のイーディスは、銀行家の父親のもとのやって来たイギリス人貴族のトーマスに好意を寄せる。トーマスもイーディスの書いた小説を褒め、二人は相思相愛の関係に発展しそうになるが、イーディスの父親はなぜかトーマスに不信感を抱く。


【感想】

 ギレルモ・デル・トロが監督した映画「パンズ・ラビリンス」は、素晴らしい映画で度肝を抜かれた。少女の空想の世界と現実世界が交互に映し出され、グロテスクな空想の世界が最後は現実の世界と交わっていく。セットやキャラクターの作り方に強烈な個性が現れ、一度味わうと癖になる濃密さだった。


 この映画でも、らしさが発揮されねっとりとした美しさが前面に打ち出されていた。特に古い屋敷でのシーンは、見ているだけで心を奪われる。スクリーンを通して、美術館を体感しているよう。ストーリーはサスペンス・ホラー。普通の監督がこの脚本で映画を撮ったら、かなりの確率で凡作になっていたと思う。


 またこの映画で登場してくる幽霊が、日本の幽霊に似ている気がした。西洋の積極的に攻撃するタイプの化け物ではなく、どこか慎ましく待ちの姿勢に徹している。ヨーロッパで成仏できないと、こんな形の幽霊になるのかもしれない。またキャスティングも絶妙で、ギレルモ・デル・トロの世界観をしっかりと補強していた。主演のミア・ワシコウシカの表情は、はかなげで幽霊との相性も抜群だった。