信念は博打に通じていそう、『ブリッジ・オブ・スパイ』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ブリッジ・オブ・スパイ

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】スティーヴン・スピルバーグ

【主演】トム・ハンクス

【製作年】2015年


【あらすじ】

 1950年代、アメリカとソ連の対立は核兵器の開発競争を伴い、危険な領域に踏み込もうとしていた。そんな中、アメリカ国内でソ連のスパイが逮捕される。そして弁護士として活躍してジェームズのもとに、スパイの弁護を引き受けてほしいという依頼が寄せられた。法律を信じるジェームズは、妻の反対を押し切りスパイの弁護人として法廷に立つ。


【感想】

 監督にスピルバーグ、主演はトム・ハンクス、脚本にはコーエン兄弟の名前が揃う。これだけビッグネームが並ぶと期待値も跳ね上がり、娯楽性と重厚さを兼ね備えた映画をイメージしたくなる。映画の舞台は米ソ冷戦。予告編から、スパイの交換が行われることが分かっていた。相当にスリリングな展開が用意されているはず。一番人気の本命馬に賭けた気分だった。


 前半は、法廷ドラマの様相を呈していた。辣腕弁護士の主人公がソ連のスパイの代理人となり、捜査の違法性を果敢に突いていく。かなり生真面目でオーソドックスなドラマといった感じだが、法廷でのシーンが薄く、あれよあれよという間に結審してしまう。おそらく軽い前置きだったのかもしれないが、ちょっと肩透かしにあった気がした。


 中盤以降、舞台をベルリンに移し緊迫感を増していく。スパイの絡むストーリーなので、二転三転を予想していたが、思いのほか変化に乏しく堂々と普通の展開を披露していた。セットやキャストは本物志向といった感じで厚みがあるが、驚きとは無縁。良く言えばあくせくしていない映画で、無理に観客の気を引こうという小賢しさはない。普通で何が悪い、といったゆとりに溢れていた。


 きっと撮りたいものを撮る、面白いと思ったものを撮る、というスタンスなのだろう。成功した人間のあるべき姿を見ているようでもあった。ただ実話を基にしたというこの映画、なぜこの物語を選んだのか最後までよく分からなかった。主人公もそれほど魅力的には映っていなかったし。普通や無名の人に惹かれたのかもしれないが、その割に主人公は凄腕の弁護士だった。普通のさじ加減は結構難しそう。