悪く言いづらい、『おおかみこどもの雨と雪』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『おおかみこどもの雨と雪

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】細田守

【声】宮崎あおい

【製作年】2012年


【あらすじ】

 大学生の花は、教室で見かけた一人の青年に惹かれ交際するようになる。だがその青年は、日本狼の血を受け継いだ狼男だった。正体を明かされても花の気持ちに変化はなく、やがて二人は雪と雨という子供に恵まれる。しかし狼男は雨が誕生して間もなく死んでしまう。花は人間と狼の習性を持つ子供を育てるため、田舎へ引っ越す決心を固める。


【感想】

 タイトルだけを見ると、流行のヴァンパイア映画かなと思えたりもする。狼人間、今風の言葉で言えばライカンと、ヴァンパイアの争いをメインにしたアクション映画を予想してもおかしくはない。最近のアメリカ映画では、ライカンとヴァンパイアはセットで扱われることがほとんどのようだし。


 しかしこの映画は、ヴァンパイア映画とは全く無縁だった。狼人間は登場してくるが、人間と争うことはなくアクションやサスペンスとも無関係。到って正しい姿勢で作られた映画で、人間賛歌となっている。人を傷つけず、懸命に生きている人を励ます内容。特に、若いお母さんや妊婦さんにエールを送っているようだった。


 子供と動物が出てきて、山の自然と人情が程よく溢れている。子供の可愛らしさで手堅く笑わせて、母親と子供の絆で泣きのポイントを用意している。手間隙を掛けたアニメーションで、多くの人に受け入れられる映画だと思う。ただ音楽はちょっと被せすぎだった気がした。感動の要素が目白押しだっただけに、音楽は引き気味でもよかったのかも。


 そして、主人公の母親役の声を担当していたのは宮崎あおい。抜群の安定感があり上手い。何を演ってもきっちりこなしてしまうのはさすが。言葉を自在に投げられる能力があるのだろう。ちょっとした言葉にも命やエネルギーが宿る。子供たちとの言葉のやり取りも微笑ましく、自然な流れを作り出していた。