運命に抗うため運命に従う、『メリダとおそろしの森』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『メリダとおそろしの森

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】マーク・アンドリュース

【声】大島優子

【製作年】2012年


【あらすじ】

 馬にまたがり森の中を駆け回ることが好きな王女メリダは、貞淑さを求める母親の王妃としばしばぶつかっていた。やがて王妃は王国の安定を考え、メリダの結婚相手を連れてくる。三人の候補者の中から一人を選ぶように迫る母親に、メリダは強く反発し城を飛び出してしまう。そしてメリダは、森の中で偶然出会った魔女にある願い事をした。


【感想】

 ピクサーの最新作。原題は「BRAVE」だが、これでは少し硬く分かりづらいと判断したの、ジブリ風な柔らかく不可思議な邦題にしている。タイトルだけを見ていると、ジブリ作品にも思えてくる。ただし内容は、曖昧さをキッチリと排除したピクサー映画。キャラクターは生命力に溢れ、映像は油彩画のような陰影がクッキリと映えている。


 そしてこの映画の吹き替え版で、主人公メリダの声を担当しているのが大島優子。大丈夫なのかなという思いもあったが、怖いもの見たさも手伝って吹き替え版で観てみることにした。意外だったのは大島優子の上手さ。可愛いだけでアイドルが務まったのは、もう一昔も前のことなのだろう。今の時代のトップアイドルは、芸も達者じゃないと務まらないようだ。


 ストーリーは、母と娘の対立と和解といったもの。そこに陽気な魔女や熊が参加してくる。あらすじだけを眺めればどうということはないが、登場人物のキャラクターの完成度はさすがだった。1つ1つの会話の肉付きがよく、現代を生きる少女や母親のリアルさが詰まっていた。もちろん遊び心もあり、アメリカの善良な部分を抽出しているような気もした。


 映像は当然文句なしで美しかった。こういう緻密さは、一人の天才の思いつきや気まぐれでは作れないのだろう。何人もの技術者が、自分の仕事をしっかりと織り込んでいくことで生まれに違いない。そして積み上げては壊し、積み上げては壊すという作業を繰り返すことで、高みに達するのだろう。ピクサーの映画を観ていると、力強く繊細なラグビーのスクラムを思い浮かべてしまう。きっと驚くほど贅沢な作り方をしているのだろう。