絆もほどほどがよさそう、『アニマル・キングダム』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『アニマル・キングダム』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】デヴィッド・ミショッド

【主演】ジェームズ・フレッシュヴィル

【製作年】2010年


【あらすじ】

 ヘロインの過剰摂取で母親が死に、17歳の少年ジョシュアは祖母の家に引き取られる。そこには祖母と伯父たちがいて、ジョシュアを温かく迎え入れてくれた。しかし彼らは、強盗や麻薬取引で生計を立てる犯罪一家だった。そして警察から執拗にマークされてもいた。ジョシュアは否応なく犯罪に巻き込まれていく。


【感想】

 実話を基にした映画で、舞台はオーストラリアのメルボルンだった。ただどういう訳かメルボルンが舞台の映画だとは思わず、最後の最後までアメリカが舞台の映画だと思い込んでいた。よくよく考えれば車は右ハンドルだったし、どこかのんびりとした雰囲気もアメリカの犯罪映画らしくはなかった。


 映画は、母親を亡くした主人公が祖母に引き取られるシーンから始まる。そしてこのお婆ちゃんが妖怪めいていて、怖さをじんわりと醸し出している。家族の絆に重きを置くが、絆が強ければそれだけ歪みも大きくなるのだろう。不自然に固まった家族が、外部との軋轢や内側からの崩壊で、バラバラに砕けていく物語だった。


 もっとスピード感や荒々しさがあると、もうちょっと違った印象になったような気もするが、派手やかさよりもリアルな家庭の風景を見せることに重きを置いたのだろう。それと主人公の少年がモサッとした風貌だったのも、映画の方針を示していた。娯楽性を重視すれば、もっとシャープで繊細そうな若手俳優を起用していたと思う。