【タイトル】『サンシャイン・クリーニング』
【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)
【監督】クリスティン・ジェフズ
【主演】エイミー・アダムス、エミリー・ブラント
【製作年】2009年
【あらすじ】
高校時代にアイドル的な存在だったローズも今ではシングルマザー、ハウスキーピングの仕事をしながら何とか生計を立てていた。一方妹のノラは、不器用で怒りっぽく仕事は長続きしない。そんなある日、ローズは不倫相手の刑事から、事件現場の清掃はいい金になると聞かされる。心機一転、ローズはノラを巻き込んで現場清掃のビジネスを始めることに。
【感想】
まだまだ知らない色々な仕事があるとは思っていたが、自殺や殺人現場の清掃を行う仕事があるとは思いもしなかった。映画はアメリカの地方都市を舞台にしていたが、日本にもこいう仕事があるのだろうか。“おくりびと”の更に先を行っているような気もする。ある程度の変死事件が発生する大都市ならば、こういう職業も成立するのだろう。
この映画の主人公は、不器用ながら懸命に生きようとするローズ。ローズは高校時代チアリーダーで、学校のアイドル的存在だった。そして今、高校時代の恋人と不倫中。生活は楽ではなく、家の掃除をするスタッフとして働いていた。変化のきっかけは、高校時代の同級生に再会したこと。豪華な家で満ち足りた友人の姿を見たことで、自分の惨めさを思い知る。
そこで始めたのが事件現場の清掃ビジネス。当初は素人然とした仕事ぶりだったが、徐々に思い入れが強くなっていく。事件現場には、様々な人間の思いや悲しみが詰まっていた。ただストーリーは、一直線に盛り上がっていくおとぎ話にはなっていない。常に厳しい現実が、ローズや妹ノラの前に立ちはだかる。
アメリカ生きることも決して楽ではないようだ。主人公が鏡に向かって自分を励ますシーンは、何とも痛々しくもある。強さや成功への過度の憧れは、脆さと裏腹の関係にあるようにも見えてくる。それでも映画には、ほのぼのとした空気が流れ現実の厳しさを程好く中和していた。アカデミー賞作品「アメリカン・ビューティー」を柔らかく調理すると、この映画の風味に近くなるような気がする。